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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 34

あれから週が明け月曜日。

幸い学校の夏季講習授業も終わり、私も晴れて夏休みを手に入れた。


「やっと夏休みだよ〜!」

冷房の効いた喫茶店でホットコーヒーを飲む。

通ぶっている感じはするが、ちょっと贅沢な気持ちになる。

本当はアイスコーヒーが飲めないだけなのだが。


「夏休みになりましたね」

加奈子ちゃんは私の向かい側で自分の顔より大きなバケットサンドを頬張っている。

レタスにトマトにサーモンがバケットに挟まれ、オリーブとバジルが掛かっているこのお店自慢の一品らしい。


「ただ、今年も結局忙しくなりそうなんだよな。嬉しい事なんだけど」

そう言ってベーグルサンドを頬張る。

私が食べているのはBLT、ベーコンレタストマトサンド。

これだけ中身の分かりやすい商品名は他にないだろう。


「私もです。コンクールが近いんで練習漬けの毎日ですよ」

加奈子ちゃんと私は喫茶店でモーニングを食べている。

お互い大きな大会を控える身。

夏休みなのに全く遊ぶ時間がない。

その為、加奈子ちゃんがレッスンに行く前の時間にこうやって会う事にしたのだ。


「それにしても、萌さん大丈夫ですか?せっかく本戦に進めたのに浮かない顔してますよ」

バケットサンドに豪快に噛り付く彼女。

私の事を心配してくれるのはいいのだが、口を目一杯開けて食べる姿を見ると顎が外れてしまうのではないかとこちらが心配になる。


「本戦に行けたのは嬉しいんだよ。ただね、なんか実感が湧かないんだよね」

昨日の夜からずっと変わらない。

心の中に詰まりがある。


「昨日もそんな話してましたね」

加奈子ちゃんからは昨日の夜電話がかかってきていた。

電話に出ると彼女は自分の事のように喜び祝福してくれた。

少しテンションも高かった気がする。

彼女からの言葉を聞けて嬉しかったし、少し安心した。

ただ、やっぱり何かが足りない。


「何かあったんですか?」

それを加奈子ちゃんは感じ取っていたようだ。

電話越しに私を心配してくれた。

せっかくお祝いしてくれているのに申し訳ない。

そんな気持ちで一杯になったのだった。

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