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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 25

雲の影まで焼き付くような白い太陽だった。

今日の空を見た時、そんな一節を思い出す。

これは、私が好きなバンドの歌詞。


ここは、私の住んでいる市から二つ離れた県庁所在地にあるこの県で一番大きな競技場。

陸上競技場のトラックまで容赦なく刺す太陽光。

必死に競技に挑む選手たちの肌を焦がしていく。


この競技場の本来の姿を私は初めて見る。

ステージがあって観客がいる光景。

これが私の知っている姿。


ここではライブもよく行われる。

アーティストの全国ツアーやアイドルのコンサートも。

県内で一番大きな会場である為、ライブを行うとなればよく使用されるのだ。

16区ナゴヤも例に漏れずここでライブをした。

好きなバンドのライブも観に行ったこともある。

だから、ステージから観る側も、ステージを観る側もどちらも経験した事があるのだ。


ライブの熱量に負けない位、目の前では選手たちの熱い戦いが繰り広げられている。

1秒の更に細かいコンマの差で勝敗が決まる世界。

素人には僅かに見える差が大きな意味を持つ。

その現場を今日は何度も目の当たりにした。


東海中学総合体育大会陸上競技。

各県の予選を勝ち抜いた選手たちが全国大会の切符を賭けて戦う大会。


「第4コース、今岡知美さん」

場内アナウンスに手をあげる知美ちゃん。

私は約束通り彼女の応援に来ていた。


女子100メートル準決勝。

選手のコールが終わると、各選手が各々のリズムでスタートの準備を開始する。

会場に手を振っていた余裕な表情は一切ない。

皆表情が真剣になっていくのが見て取れる。


「On your mark」

各選手スターティングブロックに足を掛ける。


「set」

今にも飛び出しそうな態勢。

永遠にも感じる静寂。

コンマ1秒を争う世界。

選手達がスタートのスピストルの音に全神経を集中させている。


乾いたピストルの音。

その音とほぼ同時に飛び出していく選手達。

スタートで少し遅れた知美ちゃん。

だが、30メートルを過ぎた辺りでどんどん加速していく。

周りを引き離し最後は流し気味でゴール。

難なく決勝レース進出を果たした。


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