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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 21

月と太陽は対を成す言葉として使われる事がある。

正確な対義語かどうかは詳しくはよく知らないが。

16区ナゴヤの太陽は間違いなく西村珠紀。

これは誰が見ても明らか。

ならば、柄本萌は月かと言われるとそうではない。

彼女は西村を遠ざけたりしないからだ。


21人分の踊りが頭の中にある。

その事が証明されたのはMV撮影を行った時の話。

その日、私も振り付け師としてMV、つまりミュージックビデオの撮影に同行していた。

そんな時、メンバーの一人が急遽体調不良で撮影に参加できなくなってしまった事が知らされる。

場所や撮影を行う監督やスタッフの関係で日程を変えることはできない。

こういった場合、そのメンバーの部分だけ後日撮影する場合が殆どだ。


ただ、彼女達のグループが撮影先に選んだ場所は離島。

取り直しができない状況になっている。

話し合いの末、急遽20人でのダンスで撮影する事に決まったのだが、今度はカット割りの問題が出てきた。

メンバーが何人かに別れダンスをする場面が多く組まれていた為、一人欠けてしまうと明らかにその場所が不自然に開いてしまう事になるのだ。


そこで、全体のダンスは20人、開いているポジションのダンスは代役を立て踊る事になった。

だがその場合、そのポジションを誰が踊るのかという問題が出てくる。

踊り慣れた曲ならばある程度は形になるが、この曲は新曲で、しかも1週間前に振り付けを教えたばかり。

しかも、彼女達はまだデビューして一年足らず。


振り付け師である私は頭を抱えていた。

ひとまず事情を説明し、急ピッチで振り入れをしなくてはならい。

なんとか形になれば撮影なら何とかなる。

問題は誰にその役をやらせるかだ。

しかし、私の悩みは一瞬で消し飛ぶ事となった。


「あの、それだったら私覚えてます」

私は耳を疑った。

それを言ったのが、当時まだ中学生だった萌だったのだから。


「覚えてるって、ダンスの振り付けはみんなポジションによってちがうのよ?」

さっきも言ったが、1週間まえにこの曲の振り付けを教えたばかり。

当然私は不安になった。

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