夏蝉、鳴く 12
「萌さんこれで中学2年生ですか?可愛過ぎません?」
私のスマホいっぱいに広がる幼い自分の顔。
ただでさえその顔を見るのも恥ずかしいのに、知美ちゃんに褒められて更に恥ずかしくなる。
アイドルをやっていた時、可愛いとは何回も言われてきた。
言われ慣れていると言っても過言ではない。
もちろん、アイドルという職業だったからというのは自覚している。
芸能界のみならず、私より可愛い人は沢山居るからだ。
ただ、改めて親しい人に言われるととても恥ずかしい。
「凄いですよね。私の歳の時にはもうステージに立ってたんですもん!」
私からすれば知美ちゃんも充分凄いと思う。
全国大会に出るなんて相当な実力がないと出来ない。
ただ、私が普通じゃないのもまた事実。
芸能界という広い世界に飛び込んで、アイドルという華やかな場所で過ごしてきた。
本来で有れば、勉強もして部活もして好きなアイドルを応援する側の生活を送っていたはずだ。
私が見ていた世界も知美ちゃんが見ている世界も特別なもの。
誰もが見れる訳じゃない。
一つの事に全力を注いで磨き続けた人だけがそこにいける。
ただ、そこにに居続ける為には普通では居られ
い。
アイドルを辞めた今ならそれがどれだけ特別だったか分かる。
「じゃあまた連絡してね!練習頑張って!」
連絡先を交換し終え、私は知美ちゃんを玄関まで見送る。
「ありがとうございます!頑張ります!」
頭を下げた後、玄関に向かう彼女。
「あ、あの!萌さんの踊ってる姿凄く好きでした!」
そう言って手を振る彼女に手を振り返し、私は自転車を漕ぐ。
今岡先輩の家は小さくなっていった。
“踊っている姿が好きか“
彼女の声を繰り返し頭の中で再生する。
自分の家に着き自転車を停めた私はすぐさま、ある人に連絡を取った。
私も負けていられない。
2人の熱に感化され自分を見つめ直したくなったのだ。
翌日、夏季講習授業を終えた私は名古屋駅に降り立つ。
トートバッグではなくリュックサックを背負って。




