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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 9

「では、失礼します!コーヒーありがとうございました!」

店長にお礼を言い私はお店を出る。

相変わらず扉は重い。


白い自転車で風を切る。

そういえば聞こえはいい。

普段なら心地よい筈だ。

ただ、今は夏。

アスファルトから立ち昇る熱のせいで涼風は熱風へと変わってしまう。


「暑い」

思わず言葉が漏れた。

せっかく乾いた髪もまた汗が滴る。


"このまま夏を迎えたら干からびてしまうのではないだろうか"

こんな事を去年の今頃も言っていた様な気がする。

そして恐らく来年も言うだろう。

この言葉は夏が暑い限りずっと言い続ける気がする。


「あ!萌さんこんにちは!」

そんな事を考えていると、小麦色に日焼けした女の子に声をかけられる。


「こんにちは知美ちゃん!練習の帰り?」

声をかけて来たのは今岡先輩の妹の知美ちゃん。

彼女は長ズボンを膝まで捲り上げてエナメルバッグを肩から掛けて歩いていた。


「はい!さっきまで部活でした!」

暑さを感じさせない弾ける様な笑顔。

さっきまでそんな自分ではどうにもならない愚痴を言っていた自分が恥ずかしくなる。


「そういえば、地区大会どうだったの?」

2次選考の合格通知を今岡先輩の家で会った時、彼女は試合があると言っていた。

それから会っていなかったが、ずっと気になっていたのだ。


「無事に東海ブロック大会に出場出来ました!この大会勝てば全国大会です!」

素人の私から見れば凄い事なのだが、彼女は淡々と話す。

何故だろう。

加奈子ちゃんと被る。


知美ちゃんと加奈子ちゃん。

片方はスミレのように凛としたトランペット奏者。

もう片方は向日葵の様に明るいアスリート。

歳も違えば、容姿も雰囲気も違う。

やっている事も文化系と運動系と真逆の2人なのに。


「凄いじゃん!大会はいつあるの?」

加奈子ちゃんの面影を感じながら知美ちゃんとの会話に戻る。


「来週です!今回は地元開催なので移動少なくて助かってます」


「そうなの?なら、私応援行ってもいい?」

加奈子ちゃんに言ったことと同じ事を口にしていた。

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