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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 7

汗が毛先にまで染みている。

身体が暑い。

空調はちゃんと行き届いているが、私の中の熱までは冷ますことはできない。


ただ、踊り続ける。

一心不乱に。

鈍りきった体に鞭を打つ。


レッスンに行く時間になった加奈子ちゃんと別れた後、私は一度家に帰った。

Tシャツの上からパーカーを羽織り、下はジャージというスポーティな服装と普段使っているトートバッグを持ち家を出る。


自宅での滞在時間は15分にも満たなかったかもしれない。

自転車に乗り向かう先は楽器屋「RACK」

でも、今日は身軽。

ベースを背負っていないから。


久しぶりにダンスの練習をしている。

3次選考の為、ひたすらベースの練習をしていたから。

約1ヶ月ぶりだろうか。

こうやってダンスと向き合うのは。


身体の動きが鈍い。

一拍の中の中、コンマ何秒のズレがある。

頭では分かっていても身体が付いてこない。

まるで雷の様だ。

頭から身体に伝える電気信号を雷光だとするなら、指令を受け動く筋肉は雷鳴。

近づけば近づく程雷光と雷鳴は一緒に聞こえるし、遠くなれば遠くなる程別々に聞こえてくる。


今の私は頭と筋肉がかなり遠い。

やはり日々磨かないと距離が離れていってしまうのだ。


基礎的な動きを一から確認していく。

プラモデルの関節を動かす様に自分の身体を一つ一つ動かしていき頭と筋肉の距離を縮める。

結局この日は確認作業だけで終わってしまった。


スタジオの掃除を済ませて1階へともどる。

店内を包む落ち着く香り。

店長はいつもの使い古したテーブルでコーヒーを淹れていた。


店長にコーヒーをもらい椅子に座る。

閉店時間だというのに外はまだ明るい。

そんな外の明るさと対を成す真っ黒の液体を一口すする。


今日2杯目のコーヒー。

さっきのお店のものより豆の香ばしさが強い様な気がする。


「今日はこいつを食べようと思ってな、コーヒーのブレンドを少し変えたんだ」

店長はそういいながらお菓子の箱を持ってくる。

箱を開けると中には黄緑色の餅が箱詰めされていた。

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