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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
夏蝉、鳴く
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夏蝉、鳴く 6

「コンクールは予選が4日間もあるので気持ちをコントロールするのが大変なんです」

引き続きコンクールの事について話を聞く。

まずシステムとしては、予選と本戦があり予選は音源審査の1次予選と実技審査の2次試験がある。

加奈子ちゃんは1次の音源審査を免除となっており2次の実技審査からの参加らしい。


2次予選は4日間に分けて行われる。

どの日に自分が出る事になるかは1週間前にしか分からない。

さらに、本戦に進むと1ヶ月後となり更に期間が開く。

長丁場となる為、気持ちのコントロールが出来ないと上にはいけないのだという。

優雅に見えるクラシックの世界も見えない所では気力も体力も必要な厳しい場所なのだ。

まるで湖に浮かぶ白鳥の様に。


「そのコンクールってさ!私も観に行けるの?」

コーヒーカップを置き、私は加奈子ちゃんに尋ねる。

それは、興味本位で聞いた訳ではなくちゃんとした理由がある。

一つは加奈子ちゃんの力になれればという思い。

もう一つは、自分の知識としてコンクールを観ておきたいという事だ。


加奈子ちゃんのオーケストラの演奏を聞いた後、クラシックという音楽を聴く様になった。

中古のCDショップで買ったものや、加奈子ちゃんが貸してくれたものを聴く中で学ぶことが沢山あり、その奥深さにも少しだけ触れることができた。


もちろん加奈子ちゃんの様な真剣に向き合っている人達に比べたら、まだまだ浅い感性だ。

だからこそ、観ておきたい。

本物が集まり競い合う所を。


私が観に行きたいと言った後、彼女はドーナツを食べる手を止め固まっていた。

こうなるとどうなるか、もう気持ちの準備は出来ている。


「大丈夫ですよ!萌さん来てくださるんですか?」

彼女は涙を流すまいと堪えながらドーナツをお皿に戻しながら言った。


「行きたいなって思ってる!」

彼女の変化に少し驚きながらも微笑ましくなる。


「萌さんが来てくれるなら俄然頑張れます! 必ず最優秀賞取ります!」

彼女は珍しく熱くなっていた。

さっき泣かなかったのもきっとコンクールの影響なのだろう。

コンクールを戦い抜く為に心が武装されているのだ。

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