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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 42

ライブが終わると控え室にはお寿司やピザ、ジュースやお酒が並んでいた。

でも、私はそれを横目に見ながら駅に向かう車に乗りこむ。

そして、車の中で用意してもらったおにぎりを食べる。

ライブが終わった後の記憶は大体味気ない。


未成年である私はアイドル時代、一度も打ち上げに参加した事はない。

それは遅くまで仕事をさせないという事務所の方針でもあるし、補導されない為でもある。

もちろん後日改めて打ち上げはするのだが、ライブ後のなんとも言えない高揚感はそこにはない。

楽しい事は楽しいのだが味気ない気がずっとしていた。


だから、ライブ後に打ち上げをする事に憧れているなんて言えるわけもなく私は先輩達と別れ1人待ち合わせ場所へと歩く。


「ご飯行きませんか?」

里未ちゃんに似たシンプルな文面。

でも、この文章を送るまでにどれだけの時間を要しただろう。

この一文だけでそのことが読み取れる。

連絡をくれたのはそういう子だ。


待ち合わせ場所に着いた。

だが、時計塔の前を待ち合わせ場所に選んだ自分の甘さを悔いる。

分かりやすい所を選んだのは間違いだった。

塔を囲む様に人が密集している。

むしろ、ここで待ち人を探す方が大変ではないか。

運良く見つけられたとしても、この人の中を掻き分けて合流するのは難しい。


どうしたものかと策を練っていると、後ろから肩を叩かれる。

振り向くと連絡をくれた張本人がいた。

相変わらず目を真っ赤にして。


これは出待ちというのだろうか。

はたまた打ち上げか。

私は小高さんと一緒に焼き肉を食べていた。


「小高さんから連絡来た時びっくりしたよ!名古屋にいたんだね!」

ロースターの上でカルビを焼きながら彼女に質問する。


「はい!今日はレッスンがあったので!そのせいで、ライブ観に行けなくてすみません!」

海藻の沢山入ったサラダを取り分けるという女子力をさりげなく見せなが小高さんがいう。

こういう時、気が効くのが彼女の魅力の一つだろう。

それに比べて私は牛脂を鉄板にひき、肉を焼いているだけ。 

自分の女子力のなさを痛感する瞬間だった。

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