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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 36

一度ついた先入観は一生消える事はない。


それを分かっていた筈なのに。

私はやってしまった。

観客に対して啖呵を切ってしまった。


でも、許せなかった。

元アイドルだからって自分が非難されるのはまだいい。

覚悟もしていた。

でも、16区ナゴヤみんなの夢を、応援してくれているファンを侮辱される様な事は許せなかった。

何にも知らないくせに。


私は確かに昔アイドルだった。

でも、今はバンドの一員だ。

そんな先入観で、今岡先輩が必死に作ってくれたこの曲を否定するなんて持ってのほかだ。


先輩に申し訳ないことをした。

演奏が終わりステージ袖にはけた後、私は先輩達に頭を下げた。

ここまで来れたのは先輩達のお陰なのに私が全て壊してしまった。

謝っても謝りきれない。


でも、先輩達は笑って私の頭を優しく叩き、頭を上げる様言った

私は驚いた。

どんな怒号も罵声も受け止める思いでいたから。


「お前は悪くないよ」


「あそこで、もしお前が怒ってなかったら俺がキレてた」


「多分俺なら掴みかかってた。あいつらは柄本萌の何を知ってるんだってな」

口々に私を庇う言葉を掛けてくれる先輩達。

気付いたら私は泣いていた。

これがどんな感情からくる涙なのか分からないまま。


とにかく泣いた。

初めて先輩達の前でこんなに感情を露わにした気がする。

しかも、こんな惨めな自分を。


この服も台無しになってしまった。

せっかく選んでもらったのに

私はこの派手な柄シャツに似合う女にはなれなかったみたいだ。


泣きながら先輩達に連れられ控え室へと戻る。

当然控え室は静か。

私達に気を使ってくれている様だ。


「お前らかっこよかった」

静かな楽屋で、はじめに声を掛けてくれたのはfishing is goodのボーカルの人。

お前じゃなくてお前らと言う言い方に優しさを感じる。


「演奏よかったぞ!」


「観客に噛み付いた姿かっこよかった!」


「なんかスッキリした!」

それを皮切りにあちらこちらから私達を励ます声が湧き上がる。

私達は選考で競い合っているいわば敵同士なはずなのに。

今日のお客さんの様にアイドルの事よく思っていない人も居るはずなのに。

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