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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 33

「萌ちゃん達演奏上手く行ったんだね」

私はホッとした。

私達が作ってしまった嫌な流れがあったから心配していたのだ。


「うん。萌らしかったよ」

里未ちゃんは相変わらず歯切れが悪い。

せっかく演奏が上手くいったのに。


「でもね、珠紀…問題はこの後だったの」

再び里未ちゃんが話し始めた。


演奏が終わり、お客さんに頭を下げる萌達。

歓声に包まれる彼女達の顔は誇らしげ。

モニターで見ていた16区ナゴヤのメンバー達の間でも拍手が起こり楽屋が騒がしくなる。


「演奏お疲れ!このステージで演奏してみてどうだった?」

歓声の中MCのスペーシー平尾さんがステージ袖から出てくる。

彼らにインタビューをする為だ。


「はじめてこんなお客さんの入ったライブハウスで演奏したので凄く緊張しました」

マイクを向けられるボーカルの子。

インタビューに慣れていないのか口数は少ない。


「初めてだったんだ!そう思えない位楽しそうだったよ!」

少し大げさなリアクションで感想を伝えるスペーシー平尾さん。


「そう思っていただけたのなら嬉しいです。最初はお客さんをみる余裕もなかったんですけど、途中からお客さんが曲に乗ってきてくれてるのが見えて少し心強くなりました!」

褒められたのが嬉しかったのか、少し口数が増え始める。

こういう子から感想を聞き出すのがプロのお笑い芸人さんの力量なのだろう。


「ここにいる観客の後押しもあったんだね!」


「はい!ありがたかったです!」

そう言ってボーカルの子はお客さんに頭を下げる。

恐らく咄嗟の行動だったのだろう。

でも、その謙虚な姿勢に歓声が上がる。


「そういえば…このバンドにオープニングアクトを飾ってくれた16区ナゴヤの卒業生の子がメンバーに居るんだよね?」

手元の進行台本を見ながらスペーシー平尾さんが喋る。

萌の事は恐らく事前に調べられていたに違いない。


「はい!ベースとコーラスを担当している柄本が元16区ナゴヤの卒業生です」

そして、この発言を境に会場の雰囲気が変わっていく。

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