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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 31

演奏中、萌が身体を翻しドラムの子の方を向く。

何か合図をしているのだろうか。

ドラムの子は萌の顔を見ながらうなずいている。

それを確認した萌はステージの方を向き直し戻っていく。


ラストのサビ前、間奏に入る。

ギターの子のソロパートの様だ。

気合いの入った顔つきになっている。

ギターソロが始まった瞬間、萌がマイクに顔を近づけ口を開く。


「ギター豊田樹!」

豊田樹と言われた子は少し笑顔になった後、哀愁のある表情でギターを弾き始める。

萌の掛け声のおかげもあるだろう。

観客席から歓声が上がる。

その歓声に後押しされギターの子の演奏がどんどん良くなっていく。

ギターの音色がライブハウスに広がりお客さんの熱量も上がってきていた。


ギターの子の演奏を見ていたボーカルの子は何かに気付いた表情をし萌の方に移動する。

空いたスペースに自然な流れで入るギターの子。

お客さんに近づくと彼の演奏が更に艶を増す。

さっきまでの爽やかさとは違う。

でも、決して曲の流れから浮かない。

ちゃんと曲の良さになっている。


お客さんやメンバーはギターの音に聴き入っているが、私は見逃さない。

萌がしてやったりの顔をしているのを。

あの子がああいった表情をする時は大体思い付きで何かをして上手くいった時。

萌は私達といた時から突然リハーサルにはなかったアドリブを入れたりしていた。

しかも自分じゃなく他のメンバーに注目が行くように。

心臓に悪いからやめて欲しかったが、たちが悪い事に萌の不意のアドリブはほとんど歓声に変わっていた。


一度アドリブを入れる時はせめて私には事前に言ってくれと言った事があったのだが、本人は本当に思いつきらしく踊っている最中に閃くらしい。

どうやら、お客さんの反応をヒントにしている様だ。


珠紀とは違った意味で私を振り回す。

まあ、メンバーにスポットを当てる所が彼女の憎めない所。

そしてその閃きが上手くいくと決まって口元が緩む。

その表情は珠紀と同じ様に無邪気な子供だった。

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