たりないぶたい 24
「まったく!忘れ物をしたから一回戻りたいなんて言うからおかしいなって思った!」
マネージャーが腰に手を当てて、ため息を吐きながら近づいてくる。
その姿は学校の先生みたいだ。
「ごめんなさい!嘘ついちゃいました!」
私はマネージャーにちゃんと謝った。
「次のお仕事まであんまり時間ないんだから!早く行くよ!」
そう言って怒ってはいるけれど、マネージャーは優しい。
私が一回戻りたいと言った時に恐らく嘘だと分かっていたと思う。
何故ならこの手は何回も使ってきた手だから。
「はい!すいません!」
私はわざとらしい駆け足でマネージャーの後に続く。
「もう!本当に今日だけでどれだけ私の寿命を縮めればいいわけ⁉︎」
多分萌ちゃんに会いに行く事も予想していた筈だ。
その証拠に息が全く上がっていない。
いつもなら私を探す為走り回っているせいで、見つける頃には息も絶え絶えになっている。
今日だって控え室から脱走した時は真っ青な顔で私達の前に現れたのだから。
恐らく気を使ってくれたんだろう。
さっきのステージの影響を次の仕事まで引きずらない様に。
とりあえず、マネージャーの用意してくれたタクシーに乗る。
マネージャーが行き先を運転手さんに伝え車が発進した。
窓から見えるライブハウスはどんどん小さくなって行く。
言いたかった事は言ったし満足だ。
隣ではマネージャー忙しそうにスマホを操作している。
きっと現地にいる別のマネージャーと連絡をとっているのだと思う。
この16区ナゴヤのマネージャーは全部で4人いる。
メンバーによって仕事がバラバラな時や、仕事が連続して入っている時の為にそれだけの人数が必要みたいだ。
今私の隣にいるマネージャーは基本的に選抜メンバーの仕事にいつも付いて来てくれる。
他のマネージャーがいると言う事は別仕事をやっていたメンバーが合流すると言う事だ。
「あ、でも一つだけ忘れた!」
ライブハウスが見えなくなった頃タクシーの車内で私は叫ぶ。
すると、隣で忙しそう操作していたマネージャーのスマホが宙を舞った。




