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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 19

こういう時、先輩達を立てるのが後輩の役目。

なんてかっこいい事は言ってられない。

自分の感情を抑えるだけで精一杯だから。


3次選考ライブが始まった。

1組、また1組とバンドがステージに歩みを進めていく。

ステージに立った緊張とスペーシー平尾の斜め上な質問で時々変な空気になる時間はあるものの観客席は熱を持ちつつあった。


控え室も次第に熱を帯び始める。

演奏を控えたバンド、演奏を終えたバンドが入り混ざるこの部屋は今とても騒がしい。

演奏を終えたバンドはステージの興奮が収まらないのか言葉数が増えている。

逆に言葉数は減っていくものの落ち着かないのか貧乏ゆすりや手を仕切りに動かしているのが演奏を控えたバンド。

緊張と興奮という対極にある感情がそこでぶつかり合っていた。


先輩達は後者。

例に漏れず全然落ち着かない。

今岡先輩は仕切りにトイレに行くし、横井先輩は一度もヘッドホンを外さずにいるもののしきりにスマホをいじっている。

豊田先輩は相変わらず落ち着いている様で、モニターに映るバンドの演奏を真剣に見ていた。


3次選考名古屋会場に参加したバンドが10組いる中で、私達の出番は7番目。

後ろから数えた方が早い為待ち時間は長い。

ちなみに、3次選考が始まって1時間。

4組のバンドが演奏を終えた。


私はその間モニターから流れてくる音声を聞きながらずっと指を動かしていた。

よく考えたらライブでこんなにやる事がなかったのは初めてかも知れない。

出番を控えたメンバーのフォローをしたりアンダーで23区トウキョウの曲を踊ったり、衣装替えなども含めるとこんなに控え室で待機している事はなかった。


相変わらず歓声が控え室まで漏れてくる。

16区ナゴヤのステージではあんなに静かだったのに、こんなに大きく響いている。

私は緊張よりその事に対する悔しさの感情が優っていた。


目の前で見せつけられた屈辱。

それに対して何もできない自分の不甲斐なさ。

自分がこの後ステージに立つ事を想像しようとするとその感情に飲み込まれる。

それは今考えるべき事ではない分かっているはずなのに。


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