たりないぶたい 17
お客さんが悪いわけじゃない。
私の力が足りなかった。
そう言わないといけないと思う。
だって凄いものを見たらどんな人でも凄いと思う筈だし、感動してくれるはずだから。
今は泣いちゃいけない。
だって泣いたらこのステージの悔しさも一緒に流れちゃう様な気がするから。
それに私はこのグループのセンター。
こんなとこで弱音を吐いちゃダメだ。
23区トウキョウの双葉さんみたいにもっと立派にならなきゃいけない。
それに泣いても慰めてくれる萌ちゃんはもういないのだ。
「みんな着替えて!そろそろ行かないと!スタッフさんの邪魔になっちゃう!」
里未ちゃんがみんなに声を掛けている。
自分だって泣きたい程悔しかったはずなのに。
そこにはいつもの泣き虫なキャプテンはいなかった。
自分の気持ちを押し殺してステージで頭を下げたその姿は本当に大人だと思う。
「珠紀も早く着替えて!」
もう一度ステージを目に焼き付け背を向けた。
今度来る時は…今度はみんなで笑ってステージに立ちたい。
そう誓い私は控え室に戻った。
メンバー達が次の仕事の為、衣装を着替えている控え室。
まだすすり泣く声が聞こえているその部屋で私は少し苛立っていた。
先輩ではあるが一言言いたくなる。
一体いつまで泣いているのかと。
確かにさっきのステージは私も悔しかった。
悔しくて泣く気持ちもわかる。
でも、次の仕事があるのだ。
いつまでも泣いていたら化粧は崩れるし、喉に悪いし、目が腫れて仕事に支障が出てしまう。
プロなら気持ちの切り替えも必要な能力だ。
一つの事に執着しすぎる。
こういう所がまだまだ未熟だと思うが、私は後輩だ。
そんな事をいう立場にまだない。
こんな感じでこの先大丈夫だろうか。
未来が少し不安になる。
とりあえず、衣装を着替え終わり控え室の椅子に座る。
私はケータリングで用意して貰っていたエネルギーチャージ出来るゼリーを飲みながらステージの映像をなんとなくみていた。
するとよく知らないお笑い芸人がステージでスベっている所だった。




