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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 16

私もモニターを見ながら歯を食いしばる。

キャプテンの気持ちが痛い程分かるだけに凄く悔しい。

こんな屈辱的なステージは久しぶりだ。


私の心は今控え室にない。

メンバーの事が気になって仕方ない。

きっと悔し涙を流している筈だから。

メンバーの肩を優しく抱いて一緒に涙を流したい。

そして鼓舞する言葉を掛け合いたい。


でも、もう隣にはいられない現実がある。

もどかしい。

自分でこの道を選んだのに。

納得して歩いている道なのに。

メンバー達とは違う悔しさが心の中にこみ上げてくる。


「先輩!絶対いい演奏にしましょうね!」

自分の後ろにいる今岡先輩に呟く様にいう。

私達の演奏で観客を見返してやる。

その事を強く胸に誓った。

モニターに映るステージを睨みつけながら。


柄本と同じ様にステージを睨みつける女の子が1人。

さっきまでのパフォーマンスでまだ息が整っていないのか肩で息をしている。

彼女の後ろでは必死に押し殺した泣き声が聞こえてくる。

その声は1人ではなく明らかに複数で聞こえていた。


“相変わらずね“

そう言って笑ってくれた人。

シャツは変だったけど、その笑顔は変わらず私を安心させてくれた。

その人は新しい道を歩いていた。

それをファンの方から聞いた時、すごく嬉しかった。

だから急だったけど、このステージが決まった時、頑張ろうと思った。


喜ばれる所じゃない事は分かっていた。

ロックフェスには何回か出たけど、アイドルは出る前からお客さんに目の敵にされがちだ。

でも、そんなまずい状態をいつも跳ね返してきた。

少なかった声援も最後には大歓声にしてきたのだ。


だから私、いや私達には自信があった。

しかも、地元名古屋。

大歓声でその人にバトンを渡したい。

そんな事を考えていた。


考えが子供だった。

お客さんは全然盛り上がってくれなかった。

無表情のままの人や、退屈そうな人がただ私達をボーと見ていただけ。

全然楽しそうじゃない。


私達は頑張った。

でも、頑張るだけじゃダメだった。

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