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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
たりないぶたい
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たりないぶたい 2

緊張するものは緊張する。

決して気のせいではない。

その証拠に座席の背を握っている私の手も汗で湿りはじめている。


2次選考の時もそうだったが、私は本番当日の朝までは緊張しない。

リハーサルをしている時も懐かしいと感じる余裕があるくらいだ。

ただ、時間が経ち本番が迫ってくると途端に緊張し始める。

留めどなく不安の波がやってくるのだ。


“そろそろ控え室に戻らなくては”

控え室に戻る時間が近づいている。

あの張り詰めた空気の中にいたら余計に緊張するだろう。

そう思うと身体が勝手に揺れ始める。

じっとしていられない。

気持ちも身体も落ち着かなくなっているのだ。


意を決して控え室への道を歩く。

廊下を早足で行き交うスタッフさん達。

その顔には忙しいと書いてある。

その足音が私の鼓動を急かす。


「あの、2次選考の時会場にいた人ですよね?」

そんな中、1人のスタッフさんに呼び止められる。

すれ違い様、まさか声をかけられるとは思っていなかった私。

急な声かけに心臓がはち切れそうになる。


足を留め表情を作る。

この一連の動作、時間にして1秒。

そこに自分の意志はない。

前にも言ったがこれは習慣だし、仕事をする上で必要な能力。


「お疲れ様です!16く…2次選考に参加してました柄本萌です」

振り返り自己紹介をしようとすると、無意識で16区ナゴヤと言いそうになる。

しかも、結局自分の名前言っただけ。

本来なら所属しているバンドと役割を言うべきなのに。

まだ自分がバンドのメンバーである事が意識しないと出てこないのだ。


「2次選考の時に会場でケイタリング運んでらっしゃった方ですよね?」

声をかけてきたスタッフさんは、細身で身長はあまり高くない。

髪の毛は好き放題伸び、前髪を真ん中で分けている。

ただ、この顔には見覚えがあった。

沢山のお弁当を両手に抱えて廊下を歩いていたスタッフさんだ。

私がすれ違い際に挨拶をすると丁寧に頭を下げ挨拶を返してもらったので印象に残っていたのだ。

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