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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 51

そう、それは先週の事。

私達がスタジオから出てきた時の事だ。


「そういえば、来週1日店臨時休業にするからな」

店長はさらっと私達に告げた。

理由を聞くと欲しいギターの買い付けに行くからと言うものだった。

3次選考まで1週間を切り追い込みをかけなくてはいけない時期。

本当は日付を変えて欲しがったが、私達は好意でスタジオを借りている身。

我がままな事は言えなかった。

その為、今日の練習は休みとなったのだった。


不安はある。

だが、美味しいかき氷も食べられたしいい気分転換になった。

基礎練は家でも出来るし、感覚が損なわれる事はない。


でも、やっぱり不安だ。

不安を流し込むため、目の前のコーヒーを啜る。

やっぱり味が違う。

この苦味は私には少し強過ぎる。


「お砂糖どうぞ!」

私が苦い顔をしたのに気づいた彼女は私に角砂糖の入った容器を渡す。

フライドポテトを口に含んだまま。

気付けばかき氷はもう無い。

唐揚げが盛り付けられいた筈のお皿も綺麗に無くなっている。

更に、フライドポテトも半分を切っていた。


恐ろしい食欲。

それでこの細さ。

もはや羨ましいを通り越して彼女は人間ではないのではないかと思う。


「柄本さん?大丈夫ですか?」

フライドポテトを食べる手を止め私を心配そうに見る。


「大丈夫!大丈夫だよ!」

彼女の食欲は止まる事を知らないようだ。

今はいいが、彼女の将来の姿が心配になる。


不安な事は尽きない。

私は角砂糖を2つ。

やっぱりブラックを飲むには懐の深さが足りない。

この砂糖やミルクがコーヒーの苦味と一緒に私の不安も和らげてくれたらいいのに。


白と黒のマダラ模様が一つの色になっていく。

しばらく混ざっていく様を眺めていた。


「不安ですか?」

その声に顔を上げると、小高さんは真っ直ぐ私を見つめている。

ブラックコーヒーの水面より澄んだ瞳で。

彼女の瞳をこんなに真っ直ぐ見たのは初めてかも知れない。


こんな瞳で見つめられたら世の男性はすぐに落ちるだろう。

私ですら胸騒ぎがするのだから。

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