赤黄色の胸騒ぎ 50
甘いものを食べた後は塩分が欲しくなる。
そう言った彼女は、躊躇なくフライドポテトと唐揚げを注文した。
彼女の顔と同じ、いやそれ以上の大きさのかき氷を食べ切り更に油物を摂取する。
そんな風には見えない位彼女は細い。
同性の私ですら羨ましくおもう。
一方の私は先程から氷に手をつけていない。
時間が経ち、氷が少し溶けマンゴーのシロップと混ざり器の底に溜まりつつある。
正直、全て食べ切れる自信がない。
かき氷だと舐めていた。
シロップや冷凍マンゴーの食べ応えが想像を超えている。
スプーンを持つ手が空を描いていると、小高さんは真っ直ぐ私のかき氷を見つめていた。
「食べる?」
その目に少したじろぎながら、私はかき氷を彼女に差し出す。
「いいんですか?」
言うが早いか、手が早いか。
彼女は迷う事なく氷にスプーンを刺す。
その速度、無駄のなさは居合いに近い。
食べ物を前にすると彼女は己の感情に素直になる。
最近その事が分かってきた。
私は食べ切る自信がなかったし、こんなに喜んでくれるのなら結果オーライである。
しばらく彼女の食べる姿を見ているとテーブルにフライドポテトと唐揚げが運ばれてくる。
置かれたお皿を見て目を疑う。
フライドポテトと唐揚げが別々のお皿で盛り付けられているからだ。
フライドポテトと唐揚げのセットを頼んだのだと思っていた私。
まさか単品で2品注文していたとは思っていなかった。
嬉しそうに唐揚げを頬張る彼女を見ながら、私はコーヒーを注文する。
その姿だけでお腹がいっぱいだ。
「柄本さん今日は練習よかったんですか?もうすぐ3次選考なのに」
彼女は心配そうに聞く。
フライドポテトを口に放り込みながらだが。
恐らく思考と本能が別々に働いているのだろう。
「私も先輩も練習したかったんだけど、今日スタジオを貸してくれているお店が臨時休業になっちゃったんだよ」
私が注文したコーヒーが運ばれてくる。
それは、いつも飲んでいるコーヒーとは違う匂い。
きっと味わいも違うはず。
3次選考まであと5日と迫っている。
そんな最中なのに店長がギターを買い付けに行ってしまったのだった。




