赤黄色の胸騒ぎ 49
無意識に歩いて来た道でどれくらいの分岐点を見逃して来たのだろう。
過ぎ去ってしまったらそんな事憶えていない。
そう考えると怖くなる。
あの日、あの時、あの場所。
あのポスターを素通りしていたら。
私は今ここにいなかったのではないか。
私は不意に立ち止まり拳を握る。
最近絆創膏を貼ることが減った指。
この指も綺麗なままだったかもしれない。
今一番好きな物が好きじゃなかった。
「かもしれない」が重なっていたらそんな事もありえる。
「どうかしました?」
少し前を歩いていた小高さんは私の方を向き心配そうに尋ねる。
何気なく歩いているが、それすらも何かの選択の一つなのだろうか。
だとすれば、私が今選択する道は決まっている。
「なんでもないよ!行こう!」
私は再び足を前に出す。
彼女は不思議そうに首を横に傾けたが、私の後を追う様に歩き出す。
田んぼに囲まれ何も遮る物のない1本道。
青々とした稲が力強く生えていた。
「やっぱり暑い日はかき氷だよね。より一層美味しく感じる」
力強く茎を伸ばす稲と同じ様に背筋を伸ばし目の前のかき氷に目を輝かせる。
「ここのかき氷は種類も豊富ですし、味も美味しいんですよね」
寒いくらいに冷やされた店内で、小高さんは自分の顔位の大きさのかき氷を頬張る。
ここは彼女のお勧めの喫茶店。
かき氷が美味しいと聞かされていた。
今日一緒に帰っていたのはこれを食べに行く事が目的だったのだ。
「そっちも美味しそう!一口頂戴!」
私は小高さんの食べているかき氷をスプーンで一掬い。
口の中にサツマイモの風味が広がる。
お祭りの屋台で売っている苺シロップのかき氷しか食べたことのない私にとって、サツマイモ味のかき氷は初めての体験。
かき氷を見縊っていた事を反省する。
「柄本さんの方のかき氷、味見させてください」
そう言って彼女は私の差し出したかき氷を一口。
味に満足したのか万遍の笑みを浮かべる。
私の方はマンゴー味。
マンゴーシロップと冷凍マンゴーがトッピングされている。
もし私が一つ選択を間違えていたらこの味に出会えていなかったかも知れない。
それだけでも、この選択は間違っていなかったと思えたのだった。




