赤黄色の胸騒ぎ 47
「いいか!夏休みの間に三者面談で話した通り、オープンキャンパスに行く様にな!」
担任の先生は騒ついた教室で声を上げる。
だが、少し浮ついた教室の空気はその声を遮る。
机の上には夏休みの過ごし方が記されたプリントや、宿題、オープンキャンパスの資料などが広がっており、あくまで自主学習期間なのだと私達に判らせようとする。
だが、クラスメイト達はこれからやってくる自由な時間に様々な想いを巡らせ上の空。
この程度では夏休みという限られたバカンスの想像を止める事は出来ないのだ。
結局、先生も半分諦めた様に声を上げるのをやめため息を吐く。
そして心配そうな顔をしながら、ホームルームを締めくくる。
そんな先生の気持ちに気付いているか怪しいが、クラスメイト達はこれから始まる夏休みに胸を躍らせながらそれぞれ教室を出て行く。
私もその流れに逆わず教室を出る。
ただ、その足取りは下駄箱ではなく隣の教室に向かっていた。
教室に人が疎になった頃を見計らい教室に足を踏み入れる。
実は編入してきて初めて入る別の教室。
机や黒板、ロッカーも同じものを使っているし教室の大きさも同じ。
だけど、自分のいつもいる教室とは違う。
人のいる感覚がある。
これが、生活感というのだろうか。
少なくとも、私の知らない人の存在を感じていた。
「どうかしました?」
教室の中には小高さんがいた。
それは当たり前のことで、彼女はこの教室の生徒。
でも、それは私にとっては新鮮で初めて見る風景。
いつもお弁当を一緒に食べているのに、自分の教室で自分の机に座っている彼女はまるで初めましてと言ってしまいそうになる。
「なんかさ!小高さんもうちの学校の生徒なんだなって実感した」
私がそういうと彼女は首を傾げた。
だけど、深くは聞かず鞄を持ち立ち上がる。
もう少しこの教室にいる彼女を見ていたかったが仕方ない。
むしろ、私自身が他のクラスにいる事に違和感を覚え始めており早くこの教室を出たくなっていた。
「行きましょう!」
元々今日は彼女と一緒に下校する約束をしていたのだ。
こうして、2人で教室を出たのだった。




