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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
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卒業のあと 19

「ふー食べたー!」

夕食を食べ終わった私は自分の部屋のベッドに寝転がる。

矢のようなスピードで帰宅した私。

そのせいで、余計にお腹が空いたような気がする。

おかげで、万全な状態で夕食に臨めた。


食べることは幸せな事である。

そして食べることは大切な事だと思っている。

単に食いしん坊だからというのもあるが、食べるという行為の重要性も知っているからだ。

何よりもお母さんの作る料理は美味しい。


何もない天井を少し眺めながらそんな事を考えていた。


「さて…」

ベッドから起き上がりパソコンを立ち上げる。

仮音源の楽譜をパソコンに落とし込む為だ。

パソコンが起動し、手際よくダウンロードを開始する。

こういった作業は慣れたものだ。

ダウンロードが始まると、少し手持ち無沙汰になる。


パソコンから目を離すと、封を開けそのままにしていた手紙が入った段ボールを思い出す。


“今のうちに読んでおこう”

段ボールをパソコンの近くまで運ぼうと持ち上げる。

すると、上に置いていた封筒が落ち中身が散らばる。

その際、書類と一緒に写真が出てきた。

とりあえず、段ボールを一旦置き写真を拾い上げる。


見ると沢山の人に囲まれ真ん中で花束を持つ自分が写っていた。


“あ、最後に撮った集合写真だ”

2ヶ月前に撮った筈なのに随分前に感じる。

他にも、色んな人と目を真っ赤に腫らして笑顔で写真に写る自分の写真ばかり。

今見るとひどい顔だ。

でも、なぜか輝いてみえる。


写真を眺めている私の足元に落ちている書類。

事務的な文章でこう書かれていた。


「契約終了に伴い、公式プロフィール及びブログの削除、プレゼント窓口の閉鎖が完了した事を報告致します。」


特別な体験をさせてくれた場所にはもう自分の痕跡はない。


私は本当の意味で普通の女子高生に戻った。

もちろん、あの頃も今も女子高生であることに変わりない。

だが、決定的に違う点が1つある。


私は2ヶ月前まで女子高生でアイドルだったのだ。


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