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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 41

スタジオでベースを練習していた私。

演奏をする手を止め、ため息をつく。

全然自分の納得のいく演奏にならないからだ。


正直時間がない。

人の前に立つ。

その為には100%の仕上がりでなくてはならない。

しかも、あんな派手な格好をして演奏が下手なんて一番笑えない。

そんな事が頭を過ぎる。

さっきまで楽しかったのに急に憂鬱な気分だ。


いつも出来ないことに嫌気が差す。

ダンスもベースもそれは変わらない。

だから、練習は欠かさない。

やれる事をやり切らないと気が済まないから。


「いつも全然ダメだな嬢ちゃんは」

少し呆れたように笑いながら店長はコーヒーを啜る。

久しぶりに話をしているのにいつもは余分だと思う。

だけど、それに反論することはない。

なぜなら結局いつも全然ダメだと自分で思っているからだ。


「あ、そういえば今日出かけてていいお茶菓子を見つけて来たんです!一緒に食べませんか?」

私はトートバッグの中から紙袋を取り出す。

ベースの事に気を取られ店長にお土産を買って来ていた事をすっかりと忘れていた。


「和菓子屋の包みみたいだが、中身はなんだ?」

店長の言う通り和菓子屋で買って来た物だ。


紙袋を丁寧に開き中身の箱を開ける。

中身は甘納豆。

種類毎に分けられており6種の味が楽しめる様になっている。

実は大須商店街に行った際、小高さんと一緒に老舗の和菓子屋に寄って買っていたのだ。


このお店は雑誌の取材で訪れた事があった。

その時に食べた甘納豆の味を思い出し小高さんに話すと、

「それは、大人デートで使いたい通なスポットと言う特集ですね!」

と、自信満々に言っていたから間違いない。


「コーヒーに、甘納豆。豆づくしだな」

そう言って甘納豆を素手で一粒摘み口に入れる。

店長は満足そうに微笑みコーヒーをもう一口。

どうやら、気に入って貰えたようだ。

私はティッシュペーパーを店長に渡す。

甘納豆は素手で摘むと手に砂糖の粒が付いてしまうからだ。


私も甘納豆を付属の爪楊枝で一粒刺し口に運ぶ。

チョコレートや生クリームの様な分かりやすい甘さではなく舌に染み込む様な優しい甘さ。

この優しい甘さを私は舌は忘れていなかった。

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