赤黄色の胸騒ぎ 39
「遅くなってしまってすみません。CDを選ぶのに手間取ってしまって。これでやっと少しだけ、恩返し出来た気がします」
小高さんの顔は晴れやかだ。
「覚えててくれたんだ!ありがとう!大切に使うよ!」
彼女の顔を見ると胸が温かくなる。
「小高さんと一緒に買い物に来てよかった!いいお店教えて貰えたし、何より楽しかった!」
私は香水の袋を抱きしめる。
袋の中から金木犀の香りが仄かに広がる。
そういえば、金木犀の花言葉は謙虚。
そんな香りを纏う彼女はまさに花言葉の通りなのかもしれない。
「また…また柄本さんと買い物行きたいです!」
彼女は少し緊張した表情で私を真っ直ぐ見つめる。
「私もまた買い物行きたい!また行こうね!」
私がそういうと、彼女は笑顔になった。
ただ、頬を涙が流れていく。
私はため息を一つ。
そして笑いながら彼女の涙をハンカチで拭う。
彼女の感情表現は涙を流す事が最初に来る。
おそらく泣く事に訳なんてない。
きっと嬉しさの勢いが強過ぎるだけなのだろう。
こうして、私達の初めての買い物は終わりを告げた。
金木犀の香りを漂わせて。
駅で小高さんと別れた後、私はその足で楽器屋「RACK」に向かう。
お店の扉を開けると、そこには誰もいない。
時刻は午後6時過ぎ。
お店は閉店まで1時間を切っている。
先輩達がいるかなと思ったが、今日はいない様だ。
最近は楽器屋にいる事が当たり前になっていて、いない事に違和感を感じる様になっている。
「なんだ。結局嬢ちゃんも来たのか」
店の奥から出て来た店長は呆れ顔。
それと同時に閉まっていた筈の隠し扉が開く。
「なんか花の匂いしないか?」
先輩達が楽器を背負って扉から出て来る。
お陰で店長に聞く前に言葉の意味を理解する事が出来た。
「ん?柄本?なんかいつもと雰囲気違う…よな?」
今岡先輩は私の顔を注意深く眺めながら首を傾ける。
「確かに。制服姿初めて見るかも」
横井先輩も私を上から下まで審査する様な目つきで見ている。
そういえば、先輩達に今の高校の制服姿を見せた事はない。
とはいえ、もっと他に変わっているところがある。
小高さんといる間、女子高生を楽しんでいた私はやるせない気持ちになっていた。




