赤黄色の胸騒ぎ 36
「これでいこうと思います」
私は数ある服の中から選んだ上下のコーディネートで試着室を出る。
「いいんじゃない?ステージでも映えそうだし」
店長は頷きながら満足そうな顔をする。
そして、選ばれなかった服を私から受け取り
去っていく。
試着室の前には私と、保冷剤を目に当てた小高さん。
彼女は店長と私が服を選んでいる間、ずっと目を冷やしていた。
「どうかな?」
そう言って私はその場で一回転。
「柄本さんいい顔してますよ」
彼女はそう言って笑った。
少し腫らした目にしわを寄せて。
買い物を終えた私達は店長にお礼を言い大通りに戻る。
大通りに戻るとさっきまでいたお店が消えていた。
なんて魔法みたいな事はないが、裏路地はひっそりとして見える。
不思議の国から私は戻って来た。
左手に抱えた買い物袋の中にあの柄シャツが顔を覗かせながら。
「この柄シャツはタダであげるわ。惹かれて買い付けてみたけど誰も着ないし」
レジでお会計をする時、店長にそう言われた。
その言葉に驚く事はなかった。
語弊があるといけないが、タダでもらえた事には驚いている。
この服に惹かれた事、そして誰も着ない事。
その事に対しての驚きはないと言う意味だ。
多分、これを着る人はいないだろう。
私だって普段着でこれを着ることはないのだから。
商店街から栄の街に戻ってくる。
私の隣を歩く彼女はご機嫌だ。
しっかり冷やしたおかげか、目の腫れは収まり切れ長の目に戻っていた。
対照的に私は胸焼けに襲われている。
彼女と食べ歩きは二度としないと心に誓った。
しばらく街を歩いていると、彼女は立ち止まる。
いや、初めから彼女はここを目指して歩いていたのだろう。
そこは、コスメがお洒落に並んでいるお店。
私の知らないブランドのコスメが並んでいる。
「ボディークリームとか香水を扱ってるのお店なんです」
彼女に案内されお店に入る。
ここは彼女の愛用している香水を扱うお店。香る金木犀の匂いがそれを私に教えてくれる。
またもや私は食いしん坊のウサギに誘われ不思議の国に誘われたようだ。




