赤黄色の胸騒ぎ 33
「いいお店ですね。私もここにある服全部好きになれそうな気がします」
私はお店を見回しながらいう。
「気に入ってくれてよかった!好きなだけ試着していってね!」
店長らしき人は嬉しそうに微笑むとレジの奥に消えていった。
小高さん曰く、やはり先程の女性が店長との事。
このお店に並ぶ服は全て店長が選んでおり、ブランド問わず気に入ったものを仕入れているらしい。
しかも、店内は新品ばかりではなく古着も並んでおり店長が海外から買い付けに行く事もあるらしい。
「小高さんよくこのお店見つけたね」
私は感心する。
こんなお洒落なお店を見つけてくる彼女の事を。
「このお店は同じオーケストラの人に教えて貰ったんです!私の着ていた服があまりにもダサいからコーディネートしてもらえって!」
彼女は恥ずかしそうに話す。
これを聞けば彼女の雰囲気が店長に似ていた理由が分かる。
多分、店長から服選びのポイントを学んでいるのだ。
そうとなれば話は早い。
「もうすぐ…もうすぐね、人前に立つ機会があるの。だから、小高さん一緒に選んでくれない?」
彼女は今の私の事を知っていて、ここのお店の服の着こなしを知っているのだ。
彼女に聞くのが一番効率がいい。
なんてかっこつけてみたが、本当は単純に一緒に服を選びたいという気持ちを認めたくないだけ。
私は近くに掛けてあった服を身体に合わせながらおどけて見せる。
素直に認めるのは恥ずかしいのだ。
だが、私は自分の事ばかりを考えて彼女の事を全く考えていなかった。
こんな事を言ったら彼女がどんな反応をするかを。
彼女の顔を見た私は慌ててハンカチを差し出す事となったのだから。
「本当に加奈子ちゃんは柄本さんの事になるとすぐに泣くんだから」
店長は目に保冷剤を当てる小高さんに呆れながら、私の服を選んでくれていた。
「ご迷惑お掛けしてます」
試着室のカーテン越しに謝罪する。
彼女はまだ私に慣れきっていない。
選んで貰った服を試着しながら私はため息をついたのだった。




