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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
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卒業のあと 18

足取り重く帰路を歩く私。

夕日も沈み辺りはすっかり暗くなっていた。

街灯がポツポツと明かりを灯し始め、私の足元を照らしている。


“お腹空いたな”

唐突にお腹がなる。

さっきたこ焼きを食べたが、もう空腹だ。

頭を働かせているとお腹が空く。

食欲は無限だ。


“今日の晩御飯はなんだろう。”

ダメだとは思いながらも、一度お腹が空いたらその事ばかり考えてしまう。

頭と身体を同時に動かすのは大変なのに、胃袋には従順だ。

私は案外単純なのかも知れないといつも思っている。


少し肩の力が抜けたのか、自転車を押す足取りが軽くなった気がする。


まだ、タイトルも付いていない仮音源。

テンポは早いが、少し哀愁を感じる曲。

ギターの音が何処となく寂しさを演出している。

でも、大人っぽくない。

歌詞がそうさせているのかも知れない。

頭に情景が浮かびやすい歌詞。

まるで、短編集を読んでいるようだ。


私のこのバンドでの最初の曲。

きっと一生忘れないだろう。

一生忘れたくないものが増えていく。

自分でいうのも変だが、周りの16歳の女の子よりもきっと多いと思う。

これからどれだけ増えていくだろう。


頭を働かせていたらお腹が鳴る。

周りに人がいなくてよかったな。

いや、逆に人がいないから聞こえるのか。

やっぱり難しい事は考えるべきじゃないなと思う。


“早く家に帰ろう。”

結局ヘッドホンを外し自転車に乗るのだった。

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