表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
18/417

卒業のあと 17

集会の帰り道、私は乗ってきた自転車を押して歩く。

なぜ乗らないのかというと、耳にヘッドホンをしているからだ。

耳には今岡先輩の作った仮音源が流れる。

音源は貰った日に聴く。

あの頃も今も習慣になっている。

すでに4回は聞いただろうか。

今岡先輩の裏声にもすっかり慣れてきた。


”コーラスか…”

サビの部分に入り声が重なる。

歌う事になるとは思っていなかった。

別に歌う事は嫌いじゃない。

自分でいうのも恥ずかしいが、それなりに歌は上手い方だ。


だけど、もう歌うことはないと思っていたし、歌わなくてもいいと思っていた。

私が入ることで、バンドのイメージを壊してしまうのではないか。

それが不安なのだ。


相変わらず人通りは少ない。

すれ違う人はスーツ姿の人が多くなる。

多分みんな私より年上だろう。

それぞれが、色々な事を考えながら歩いていると思う。

だけど、何を考えているかは分からない。

逆に私が、今何を考えているかもきっと誰も分からない。


自転車を漕いでいる時とは違い、足は勝手には進んでくれない。

進まない足を無理やり動かし帰路を歩く。

今日は、色んなことを考える日だった。


5回目のリピート再生が終わる。

いつも、新しい曲を貰うたびにワクワクしていた。

今回もそのワクワクはある。

それと同じ位の不安もある。


“この矛盾した気持ちを忘れないでおこう。”

そう心に刻む。

6回目の前奏が始まる。

この曲の中の“あの子”は何を考えているのだろう。


背中に背負ったベースが少し重たかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ