赤黄色の胸騒ぎ 20
電車が目的の駅に着くまで彼女は起きる事はなかった。
その間、何をする訳でもなく窓の外の景色を見ていた。
毎日見ていたこの景色。
久しぶりに見ても何も変わっていない。
実際そんなに期間が空いた訳でもないのだから当たり前と言えばその通りである。
変わったと言えば、電車の窓に映る私の姿くらいだろう。
髪も短くなり、伊達メガネをつけている。
毎日かがみで自分の顔を見ているのに、窓越しに見ると少しだけ大人びて見えた。
そう言えば、こうやって窓を見ていたら先輩と会った事があった。
そんな事も思い出す。
今は肩には隣にはまだ友達とは言えないけど、一緒にごはんを食べる子がいる。
駅は目的地に到着した。
私は隣に眠る彼女を起こし列車を降りる。
彼女は私が居なかったらこのまま寝過ごしてしまったのだろうか。
かく言う私も私も何度か寝過ごした経験がある。
人の事をとやかく言えないなと苦笑い。
「今日は本当にありがとうございました!また学校で!」
彼女の家は私の家と駅を挟んで反対方向。
だから、改札を出た所で別々になる。
彼女は私が階段を降りて出口に向かって降りていくまで手を振ってくれた。
どこまでも律儀な子なのだ。
そんな彼女に手を振り駅を出る。
駅前の商店街は人の移動が疎らだ。
先程まで名古屋に居たせいか、単純に人通りが少ないのか。
私はヘッドホンを耳につけ駅前を通り過ぎる。
ヘッドホンから流れる音楽に身体を揺らしながら歩く。
気分が高まっているせいか柄にもなく、軽くステップなんか踏んでしまう。
いつもは寂しく感じる商店街の明かりが今日はダンスホールのスポットライトの様だ。
今なら何を聞いていてもダンスミュージックになるような気がする。
後から思い出したらきっと顔から火が出る程恥ずかしくなるだろう。
きっと後悔する。
だけど、私は自宅に着くまで音楽に身を任せていた。
都合よく今だけはこのままでいいなんて思いながら。
そう思っていた。
自宅に戻り、自分の部屋に戻るまでは。




