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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 19

ほんのり黄色の色味の付いた梨のムース。

まず、スプーンで掬って一口。

舌の上で果汁が広がる。

梨の瑞々しさはそのままに、ムースの程よい舌触り。

先程まで口の中にあった、えびやナポリタンへの恋しさを優しく忘れさせてくれる。


小高さんも気に入ったのか、止まる事なくスプーンを進めていく。

シェフのおじさんに見えるように親指を立てる。

おじさんは嬉しそうに親指を立て返す。

他にもお客さんがいる。

だから、美味しい時はこの様にサインを送る様にしているのだ。


デザートを食べ終えた私はお店を出る。

お腹が一杯になり、幸せな気分な私は夜空を見上げる。

星が輝く夜空を邪魔する様にビルは明かりを垂れ流す。

やはり、この街では星は主演にはなれない。


「柄本さんにご馳走してもらうなんて出来ません!申し訳なさすぎです!」

助演でしかない星を見て少し感傷的になっていると、小高さんが慌ててお店を飛び出してくる。


「気にしないで!演奏会に呼んでもらったお礼だよ!」

私は彼女が席を外した隙にお会計を済ませお店を出た。

もちろん、デザートの感想と料理のお礼をシェフのおじさんに言ってからだが。


「演奏会も私から誘ったのに!」

頑なに自分の分を払おうとする彼女を抑え、私達は駅に向かう。

晩御飯代を払った理由が、実はちょっと大人ぶって見たかったなんて恥ずかしくて言えない。

だから、何としても割り勘にする訳にはいかないのだ。

でないと、ライブでのMCトークのネタ帳の一つになってしまう。


なんとか、彼女に財布を蔵わせる事に成功し私達は電車に乗る。

しばらく電車に揺られていると、肩に荷重を感じる。

横を見ると彼女がトランペットを大事そうに抱えながら私の肩にもたれかかっていた。

演奏会もあったし、疲れて寝てしまったのだろう。


寝ている彼女の横顔はまだ少女のあどけなさを残す。

彼女の色んな表情を今日は見れた気がする。

まだ見ていない表情をこれから知る事が私に出来るのだろうか。

電車が揺れる音だけが聞こえてくる静かな車内でそう思った。

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