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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 17

彼女の話を聞いていると、奥さんが料理を運んでくる。


「まずは、綺麗なお嬢さんはあんかけスパゲティね!セットのスープとサラダも一緒にどうぞ」

奥さんはさりげなくお客さんを褒める。

こういうさりげなさが食べる人の気分を良くし、食事を楽しいものにしてくれる。


小高さんはここの名物、あんかけスパゲティを注文した。

始めてくるお店だ。

名物を頼むのが一番失敗はない。


「萌ちゃんはナポリタン!後、えびとエリンギの香草焼きね!」

香草の香りがテーブルに広がる。

私はここの香草焼きが好きだ。

チキンや青魚など様々な香草焼きがあるが、このえびを食べた時の感動が今も忘れられず、このお店に来ると必ず頼む。

ちなみに、あんかけスパゲティではなくナポリタンを選んだのはそういう気分だったからだ。


私はフォークを持ち、えびとエリンギの香草焼きへと手を伸ばす。

えびをフォークで刺した瞬間、えびとフォークの間に張っていた薄い膜が破れる。

一瞬フォークに抵抗するえびの身。

身がしっかりしている証拠だろう。


口の中にえびを放り込む。

と言っても、口に入るのは半分が限界。

歯で噛み切ったえびの身を味わう。

口の中に香草の風味が広がり、その後えびの味がやってくる。

何度食べてもこの瞬間が好きでたまらない。

色々な所で、えび料理を食べたがこの香草焼きが一番好きだ。


この感動を独り占めするのは罰当たり。

小高さんにも皿を差し出しえびを勧める。

彼女は遠慮気味にフォークを伸ばし、えびを口に運ぶ。


「美味しい!」

彼女はその切れ長の目を大きく見開き、口を手で押さえる。

敬語ではない所を見ると思わず飛び出した素直な感想なのだろう。


「喜んでくれてよかった!このお皿の料理一緒に食べよ!」

自分で作った訳ではないのに嬉しくなる。

私達のやりとりを見ていたシェフのおじさんも誇らしげだ。


ちなみに、えびの出汁を吸ったエリンギも美味しいのだが、その発見は自分で見つけてもらうことにした。

その方が、驚きも一塩なはずだから。

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