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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 16

こんな雰囲気の時、大人ならバーに行くのだろう。

お酒が飲める様になったら行きつけのバーを見つけるのも悪くないかもしれない。

そんな事を思いながら私達はグラスを合わせ乾杯する。

グラスの中身はアップルジュース。

私達はまだ高校生。

お酒を飲むにはまだ経験が足りない。


お腹が空いた私達はご飯を食べる為、とある洋食店に来ていた。

あんかけスパゲティが名物のお店。

私のアイドル時代、ロケで来て以来よく利用する様になった私の行きつけの店だ。


「最近萌ちゃん来てくれなかったからおじさん寂しかったよ!」

そう言って私に話しかけてくれるのは、亭主でシェフのおじさん。

真っ白なコックコートに身を包み、口髭を生やしている。

気さくで私にもよく接してくれる優しい人だ。

そういえば、シェフのおじさんの言う通りアイドルを卒業して以来来ていなかった。


「少し大人っぽくなったんじゃない?髪の毛短くして雰囲気変わった様な気がするよ」

少し恰幅のいい女性はシェフの奥さん。

いつも私を褒めてくれる。

ここは夫婦2人で切り盛りしているテーブル席3つとカウンター席5つの小さなお店。

料理をシェフであるおじさんが、配膳を奥さんが行なっているのだ。


今日は私達以外のテーブル席は2つ埋まっており、カウンター席も満席。

珍しい光景ではなく、この店はいつも繁盛している。


私と小高さんはリンゴジュースを飲みながら料理を待つ。

なぜリンゴジュースなのかというと、私がここのリンゴジュースが好きだからだ。

シェフのおじさんが長野県出身で地元から取り寄せている為、他のお店のリンゴジュースより断然美味しいため私は気に入っている。


一方彼女はと言うと、リンゴジュースに舌鼓を打っている私を他所に目を輝かせながら店内を見回している。


「このお店って柄本さんがロケで来たお店ですよね!本物だ!来れて嬉しいです!」

鼻息荒くして私に嬉しそうに話す彼女。

確かロケでは1回しか来ていないはず。

よく覚えているなと感心する。


大人びた彼女は何処へやら。

今はただのアイドル好きの高校生に戻っている。

お陰で、演奏会の話をするタイミングをすっかり失ってしまった。

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