赤黄色の胸騒ぎ 15
耳鳴りが凄い。
昔からライブが終わりは音が耳の中に残っている。
だからいつも自然に収まるのを待つ。
これも一つの余韻だと粋なことをいつも思う様にしている。
演奏会が終わり、耳鳴りを引きずったままホールの外にでた私は招待してくれた小高さんに連絡をしようとハンドバッグからスマホを取り出す。
しかし、画面は真っ暗。
演奏中電源を切っていた事を思い出しスマホの電源を入れる。
電源が入ったと同時に、連絡が一件画面に表示された。
「演奏会に来てくださりありがとうございます!よかったら一緒に帰りませんか?」
こうして私は彼女と一緒に帰る事となった。
大人な雰囲気のビルが立ち並ぶ街中を私達は一緒に帰っている。
薄めの水色ストライプのシャツに白のロングスカート。
足元はパンプスではなく白いスニーカー。
黒のドレスから私服に着替えた彼女は、髪型のせいか、演奏の余韻か、大人の女性の雰囲気をまだ身にまとっている。
街の雰囲気も影響しているのかもしれない。
事務所のオフィスであった受付のお姉さんの様な出来る女性を感じさせる出で立ち。
隣を歩く私は少し緊張していた。
「お忙しいなか演奏会来てくださってありがとうございます!」
彼女はさっきまで吹いていたであろうトランペットが入ったケースを両手で持ったまま頭を下げる。
「お礼を言うのはこっちだよ!すごく感動した!本当にいい機会をくれてありがとう!」
私が頭を下げると彼女はあたふたし始める。
「いえいえ!柄本さんが来てくれたお陰でいい演奏をする事が出来ました!こちらこそ、感謝しかないです!」
こうやって必死になる姿を見ると安心する。いつもの彼女なのだと感じられるからだ。
何を話そうか。
演奏会の感想?
賞賛の言葉?
どれもしっくり来ない。
少し悩んで、私は自分に素直になる事にした。
「小高さんお腹空かない?」
私の言葉に彼女は首を大きく縦に振る。
その時の笑顔が、小高加奈子が自分と同い年なのだと理解させてくれたのだった。




