赤黄色の胸騒ぎ 11
「そうだったんだ!隣のクラスなら声掛けてくれればよかったのに!」
そうすれば、もっと早く仲良くなる糸口をつかめた筈だ。
それに、友達がいない事を悩まなくて済んだのに。
「私もそう思ったんですけど、緊張しちゃって…それに…」
彼女は言いにくそうに俯く。
「遠慮しずに言って。せっかく話しかけてくれたんだもん!なんでも聞くよ!」
私は優しく彼女を見つめる。
「柄本さん、いつも登下校中真剣な表情でヘッドホンつけて歩いていらっしゃるので話がけ辛くて」
今度は私が下を向く。
顔から火が出そうなほど恥ずかしい。
穴があったら入りたいくらいだ。
最近それに似た様な事があったが、それと同じくらい恥ずかしい。
毎日、自分達がレコーディングした曲やテスト前はリスニングの音源を聴いていたら分かる。
だが、ヘッドホンで聴いていた大半の音源はラジオ番組。
真剣な表情でラジオ番組を聴いていたと考えると何をそんなにスカしているのかと自分に言いたくなる。
いや、真面目な顔してラジオ番組を聞く様な奴は一番危ない。
「お、音楽聞いてただけだよ!バンド活動の勉強の為に!」
別になにを聞いていたのか訊かれていないのに必死に音楽と言い張る私。
これが推理小説なら私は間違いなく警察官の思うツボ。
自ら自白した様なものである。
「そうなんですか!それなら真剣な表情してたのも納得できますね!柄本さん流石です!」
彼女がいい子でよかった。
私の事を何にも疑っていない。
「今日からは全然話しかけてくれて大丈夫だよ!私からも話しかけてるし」
真っ直ぐに私を見ていた彼女は時が止まった様に固まる。
そして、また泣き始めてしまった。
「泣かないで!私に話しかけられるの嫌だった?」
「違います!嬉しいんです!柄本さんに話しかけて貰えるなんて夢見たいで!」
この子はどれだけ良い子なのだろう。
それだけ、私に憧れてくれているなんて私はどれだけ幸せなアイドル人生を送っていたか。
卒業した今、それに気づかされていた。




