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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 10

彼女と初めて会った時、彼女は泣いていた。

机を隔て正面から向かい合う彼女と私。

両手は包む様に優しく握られている。


彼女はたった一言

「ファンなんです」

涙ながらにそれを伝えると時間が来てしまった。

彼女は名残惜しそうにブースから出ていく。

金木犀の香りを残して。

その印象が強い為、私は金木犀の子と呼んでいた。

私はアイドルで彼女はファン。

握手会という特殊な場所。

それが、彼女との出会いだった。


それ以来、彼女は握手会に来ては泣いて、来ては泣いてを繰り返し、まともに喋る事ができる様になったのは出会ってから1年後のことだった。

だが、私はまた彼女を泣かせる事になる。

私が卒業を発表したからだ。


卒業を発表した後、彼女の泣いた顔をまた見る事となった。

その為、彼女の笑顔はほとんど見た事がない。

だから、彼女のこんなに凛とした姿を見た事がなかった。


「また泣かないでよ!こうやってまた会えたわけだし」

いつの間にか敬語を外していた。

私の声を聞くとまた彼女は泣き出してしまう。


“このままじゃマズイ”

そう思った私は、彼女の手を取り掲示板を離れる。

迷った私は彼女を南校舎の奥、誰も使っていない教室に案内する事にした。


「うちの学校こんな所があったんですね!知らなかったです!」

目を真っ赤に腫らした彼女は、ようやく落ち着いてくれた様で笑顔をみせる。


「私も見つけた時は驚いたよ!昼の間は誰もこないし、私の秘密基地って感じかな?」

私はとりあえず、お弁当用に入っていた保冷剤を彼女に渡す。

少しでも目を冷やさないと昼からの授業を目が腫れたまま迎える事になってしまうからだ。


保冷剤で目を冷やす彼女。

私が見ているせいか少し俯いている。

やっと泣きやんでくれて一安心し、彼女の話を聞く事にした。


「私は2年3組の小高加奈子です。だから、柄本さんとは隣のクラスですね。」

私は2年2組。

彼女のいう通り隣のクラス。

隣のクラスとは交流がない為、全く分からなかった。

あの時の金木犀の香りは彼女の香りが風に乗って流れて来た様だ。

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