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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 9

声をかけられ振り向いた私は息を飲む。

そこに立っていたのはとても美しく凛とした顔をした女性だったからだ。


「はい。そうですけど…」

女性と表現したが私と同じ様にカッターシャツを着ている所から、この学校の生徒である事は間違いない。

だけど、思わず緊張して素っ気ない態度を取ってしまう。


「16区ナゴヤとアンディーのー」


「イングリッシュで地球一周!」

彼女の突然の呼びかけに私は反射的に答える。

これは、地元テレビ局で私が出演させてもらっていた英語の番組のタイトルコール。

決して、ハイセンスではないが私は好きだった。


「本物だ!やっぱり凄い!生でこれを聴けるなんて信じられない!」

彼女の顔がパッと明るくなる。

その笑顔は薔薇や向日葵というよりスミレの様。

少し控えめだけど可愛さを感じさせる。


「私、柄本萌さんのファンなんです」

そういうと、彼女の少し切れ長の目から涙が溢れ始める。

緊張している私はより動揺した。

この学校で私に初めて声を掛けてくれた子は、とても美人で私のファンだと言っている。

しかも、私が出ていた番組のタイトルコールを覚えていてくれているのだ。

それだけでも恐れ多いのに、目の前で泣かれてしまっている。

私はどうすればいいのか分からず、焦るばかり。


「あ、あの、お名前聞いてもよろしいですか?」

とりあえず、名前を聞く事にした。

本来ならファンだと言ってくれた人にお礼を言うのが礼儀なのだが、緊張と動揺で呂律が回っていない。


「あ、私は小高加奈子(こだかかなこ)です」

彼女は涙を拭きながら私を見る。

髪が舞い上がった時に香る金木犀。

この時、私はその顔を見て思い出す。


「あれ?金木犀の子だよね?」

私は彼女の事を知っている。

最初は動揺していたし、制服に身を包んだ彼女は全くの別人に見えたから分からなかった。

金木犀の香りが私の記憶を呼び覚ましていく。


「嘘!覚えていてくれたんですか?信じられない!」

また彼女は泣き出してしまう。

そう言えば、初めて会った時も彼女は泣いていた。

だから、泣いた顔の方が記憶に残っているのだ。

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