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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 5

人は時として色を失う。

それは、挫折を味わった時、絶望に打ちひしがれた時、夢を失った時、そして味わった事のない恐怖を感じた時。

ここにいる豊田樹も色を失い、何の目的もなく外を見つめていた。


私は机に向かい勉強をする。

店内はとても静かだ。

今岡、横井、両名はそんな豊田をそっと見守っている。

日差しが差し込まれた昼下がり。

蝉の鳴き声も遮りノートに綴る音だけが聞こえてくる。


豊田先輩には悪いが、これは八つ当たり。

分かっているが、私だってまだテストが残っている。

これは致し方ない事なのだ。

そう自分の中で正当化するロジックを作っていく。

めんどくさい自分がまた顔を出す。


そんなめんどくさい私もテスト最終日を戦っていた。

前日の喧騒から一夜明け、文字を書く音だけが響いている静かな教室。

室内は緊張感が漂っている。

その緊張感を身体全体で感じながら問題を解き進めていく。

適度な緊張感はパフォーマンスを上げてくれると学んできた。

今日の様な緊張感ならいつでも大歓迎だ。


懐かしさすら感じる肌が張る感覚。

自然と背筋が伸びる。

昨日自分がやった事などすっかり忘れ、シャーペンを走らせる。


問題の答えを頭の中の引き出しから取り出していく。

開けたら閉め、また別の引き出しを開けての繰り返し。

私の頭の中では、はっきりと引き出しを開ける光景が浮かんでいる。

その事を友達やメンバーに話したら変わっていると言われた。

どうやら、その光景を見ているのは私だけらしい。


相変わらず、蝉が外で鳴いている。

だが私の耳には届かない。

代わりにテストの終わるチャイムの音が鳴り響く。

4日間に渡るテスト日程が終了した合図。

祝福を祝うファンファーレ。


クラスメイト達が一斉に雲海から顔を出す。

まるで、今日初めて呼吸をしたかの様に大きなため息がそこかしこから聞こえる。

私もシャーペンを置き、大きく身体を伸ばす。

テストが終わった開放感が身体を包んでいく感覚に酔いしれていた。

大きくため息を一つ。

自分でも予期せず、自然と口から漏れていた。

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