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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 4

皮肉はさておき、彼の話は興味深い点が何個かあった。

話を聞いてよかったかもしれない。

ほかの審査員も好感触の様で頻りにメモを取っている。

現場のスタッフの意見にもいい発見があるものだ。

これからは、音楽関係者だけでなく現場で働くアルバイトにも声をかける様にしよう。

意外な原石が見つかるかもしれない。


そんな事を考えていた俺はふと我に帰る。

会議時間がかなりの押していた事を思い出したのだ。

腕時計を見る。

どうやら、新幹線の時間を変更した方がいい。

会社に溜まっている仕事を思いため息をついた。


「あーやっと終わったー」


「長かった」


「疲れた」

抜け殻が机に三つ。

蝉の鳴き声がそろそろ鳴き始める頃。

楽器屋「RACK」の店内でも抜け殻達が鳴き始めた。

その片隅で黙々とシャーペンを動かす。

先輩じゃなかったら嫌味の一つでも言っていただろう。


楽器屋「RACK」にはバンド名「vacant land」のメンバーが勢ぞろいしていた。

一足先にテストを終えた今岡、豊田、横井、3人の先輩達。

そして、まだ1日テストが残っている私。

正直、先輩達がいると勉強をする意思が削がれていく。


にしても、テストが終わった日にもここにいる先輩達は暇なのだろうか。

他にやる事はないのか。

毎日ここにいる自分の事を棚に上げ、私は先輩達を睨む。


「おい!柄本、そんな怖い顔で睨むなよ…」

私の正面にいた横井先輩は私の視線に気付き背筋を伸ばす。

今岡先輩と、豊田先輩も私の雰囲気を感じ取ったのかそっと顔を逸らす。


名古屋会場で魅せたアイドルスマイルとは真逆。

眼孔は鋭く、口角なんて1ミリも上がっていない。

テレビどころかあの頃のファンにも見せられない顔をしている。

テスト期間のストレスがピークを迎え、私の堪忍袋の貯蔵量も限界。

すでに2アウトに達していた。


「柄本そんな顔するなよ。アイドルスマイルの時の可愛さが台無しだぞ」

3アウト、ゲームセット。

私は豊田先輩に渾身のアイドルスマイルを見せた。

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