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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
卒業のあと
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卒業のあと 15

曲がサビに入ると、女性のコーラスが入っている。

“誰が入れてるんだろう?”

声からは分からないが、それなりに高い。

女性のコーラスが入るなんて今までの曲にはなかった。


気になりながらも曲に集中しなおす。

まだ楽譜を見てないが、相変わらず音が面白い。

まるで、何かを試しているような音の組み合わせをする。

何曲か今岡先輩のオリジナル曲を聴いたがこういったパターンが結構ある。


今岡先輩はこれを授業中に作るのだから面白い。

高校の授業を受けるのにまだまだ慣れきっていない私からすれば、凄い勇気だ。

多分、6限受けきる前に力尽きてしまう。


「という感じだけど…」

最後の音が鳴り消えたの確認し、今岡先輩はアプリを閉じる。

静かになる室内。

真剣に聴いていた二人の先輩は、大きく息を吐く。

まるで、今まで呼吸を忘れていたかのようだ。

そして、豊田先輩が第一声を放つ。


「あり!」

軽い。

さっきまでの真剣さは何処にいったのか、一気に肩の力が抜けていく。

四人とも顔を見合わせ思わず笑ってしまう。

今岡先輩は、安心した様にはにかんだ。


「こっからアレンジ加えるんだろ?」

横井先輩も手書きの楽譜を見ながら笑っている。


「正解!いつも通りみんな頼むな。楽譜と音源は今データで送るから!」

そういうと、タブレットを操作し始める。

どうやら、メンバーで編曲をするらしい。

今岡先輩の新しい曲の披露は初めての経験な為、いつもこんな感じなのか分からないが大体こんな感じみたいだ。


その光景を見ていると、私のスマホにも音源と楽譜が送られてきていた。


「ちゃんと聞き込んで意見頼むな!」

今岡先輩が私の方を見る。


「え?私もですか?」


「当たり前だろ!うちのバンドメンバーの一員なんだから!」

私なんて…という言葉を言いかけて留まる。

こういうのも必要な事だということは知っている。

音楽を作ったのは違っても演奏するのは自分達なのだということは嫌ほど学んだから。


「頑張ってみます!」

やってみよう。

私はスマホの受信履歴を見て強く拳を握ったのだった。

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