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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
赤黄色の胸騒ぎ
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赤黄色の胸騒ぎ 0

柄本がテストに挑んでいる頃、名古屋の高層ビル群の中にあるオフィスビルの一つ。

地方テレビ局の会議室である会議が行われていた。


「このバンドは緊張したのか音が走ってしまってる。しかも、それを修正し切れずリズム隊が崩れてしまったな」


「ギターは良かったのに。勿体無い」

話し合う声が聞こえる。

会議室に居るのは、2次選考で審査員を務めた3人とその他のスタッフが5人。

全員の視線の先にはスクリーン。

2次選考の各バンドの演奏の様子が映し出されている。

ここではまさに2次選考の合格者を決める会議が行われていた。


国越吉貴(くにこしよしたか)も審査員の3人の中の1人。

細身で背は高く短髪。

髭はなく、顔は中性的だがかっこいい。

スポーツマンというよりモデルといった顔立ち。

グレースーツを身に纏い、ネクタイは紫。

歳は35歳で、審査員の中では一番若い。

だが、肩書きは大手レコード会社のスカウト担当。

その立場もあって、全国で行われている選考会の選考すべてに携わっていた。


次々とバンドの映像が流れていく。

映像を観るのは正直骨がおれる作業だ。

国越はペットボトルのコーヒーを飲みながら、机に置かれた書類を見つめる。

目は離していても耳は外さない。

映像の見過ぎで頭痛が起きる事を避ける為に編み出した方法だ。


映像を観ては話し合い、観ては話し合いの繰り返し。

名古屋会場は5箇所ある内の3番目に行われている。

だから、俺も選考会議はこれで3つ目。

何回か繰り返してわかって来た事は映像を観なくても音を聴いていれば大体の結論が出るという事だ。


ここにいるのは、音楽番組のプロデューサーや作曲家、第一線で活躍するバンドマン。

殆どが音楽に携わっている人物ばかり。

その場所によって多少の好みは違えど、音を聴けば曲や演奏の良し悪しを判断出来てしまう。


それでも話し合いをするのは事実確認。

そして、周りのスタッフ達にも分かりやすく説明するため。

なんでそんなまどろっこしい事をするのかというと厳正な審査をしたと周りにアピールする必要だからだ。

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