卒業のあと 14
この出会いから1年、私は今そのバンドにいる。
その間色んな事があったが、一つだけ言えるのはあの頃も音楽をずっと好きでいるという事だ。
「そろそろ新曲作らない?」
時間は現在に戻り楽器屋RACK。
使い込んだ木の机を囲み話し合いを行なっている。
豊田先輩が、真面目な顔つきで発言する。
私と横井先輩もその発言に頷く。
「そういうと思ってもう作ってきた。」
万遍の笑みを浮かべる今岡先輩。
カバンからタブレットと手書きの楽譜を取り出す。
まるで、そうなる事が分かっていたようだ。
すると、先輩二人が何故か笑い始める。
「最近授業真面目に受けてるのかと思ったらこれ書いてたのか。」
どうやら授業中に楽譜を書いていたらしい。
普段の授業をよく寝ているらしい今岡先輩が、真面目に何かを書いていると思うと確かに面白い。
「曲は思いついた時に書かないと忘れちゃうだろ。」
よく先生に見つからなかったなと感心してしまう。
ちなみに、タブレットがあるのは手書きで楽譜を書きそれに落とし込んでいるようだ。
最近の技術の進歩は凄い。
書いた楽譜に専用のアプリで写真を撮ると、丸写しが出来る。
さらに、それに書いた音を様々な楽器の音に変換する事ができるのだ。
「とりあえず聞いてみようぜ。」
そのアプリで音入れした仮音源を再生する。
イントロが流れ始め、四人共が真剣な顔付きでその曲に集中し聞いていた。
今のアプリは凄い。
まるで実際に誰が演奏しているような楽器の音が出せる。
ギター、ベース、ドラム、その音に重なるように今岡先輩の歌が入ってくる。
静かな楽器屋の店内に音が響く。
不思議とお店の雰囲気を邪魔しない。
窓の外は夕焼け。
ぴったりと外の景色と合っている。
そんな哀愁を感じる曲だった。




