ありがちを叫びたい 43
1日の授業が終わり私は帰り支度をする。
家に帰ったらまた勉強しなくてはならない。
教科書をカバンに詰め込む。
教室を出るとヘッドホンをつけアプリを起動する。
帰り道に聞くのは音楽でもラジオでもなく、英語のリスニング。
帰りの少しの時間も勉強に割く。
隙間の時間を有効に使う。
ロケの移動時間、よくバスに揺られながら勉強した。
“よく珠紀の宿題手伝ってたな”
自分の宿題をやりながら珠紀の宿題を教えていた。
お陰で自分の宿題が全然進まず、仕事が終わってから夜な夜なやっていた事もあった。
“テスト前にあの人の家泊まって勉強した事もあったな”
テスト前は勉強合宿と称しあの人の家に泊まって勉強していた。
あの人は頭が良く色々と教えて貰っていた。
そういえば、今通っている高校の転校試験を受ける時は仕事が忙しくなったあの人の代わりにキャプテンに勉強を教えて貰った。
思えば、1人で勉強をしてテストを受けた事がない。
その事を思い出すと急に寂しくなりヘッドホンを外す。
周りを見渡しても田んぼしかないし、鳥の鳴く音しか聞こえない。
私は歩くスピードを上げる。
「で、なんで嬢ちゃんはここにいるんだ?テスト前じゃなかったか?」
いつものパーカー、いつものジーンズ、いつものトートバック。
いつもの楽器屋。
いつもの使い古した机。
この机の上に勉強道具を広げる私。
「家で勉強しても全然集中出来なくて。ここの方が集中できる気がするんです」
これは嘘だ。
急に寂しくなった私。
ここに来れば話し相手がいるし、何より安心する。
そう考えこの場所に来ている。
毎日の様に通っているこの場所は既に自分の居場所になりつつあるのだ。
「年頃の女子高生が行きつけにするには渋すぎると思うぞ」
店長はそういうとレジ奥の作業場に戻って行く。
店長の話し声がなくなった途端、楽器屋「RACK」はいつも通り静かになる。
静かになった場所で私は勉強を進める。
たまに楽器の音がするが、なんだか落ち着く。
ここの方が集中できると嘘で言ったつもりだったが、案外捗っている。
1人で使うには大き過ぎる机。
それを気にする事もなく私はシャーペンを走らせていた。




