ありがちを叫びたい 42
アイドルだった頃の面影が一切ない場所。
それが学校だ。
二次選考が終わった翌日、授業を受けながら私はふと思う。
選考の時は気付かれたのに、学校では一切気付かれない。
不思議だ。
これだけクラスメイトがいれば誰かに声をかけられてもおかしくないはずなのに。
まあ、気付かれない方が楽でいい。
普段ならここで欠伸を我慢する所だが、今はそうは言ってられない。
黒板を見ながら必死に板書をノートに写す。
二次選考が終わったばかりだが、ゆっくりしていられない。
定期考査が間近に迫っているのだ。
勉強は苦手ではない。
ここでいい成績を残したいという気持ちはある。
だけど、公立高校のテストを受けるのは初めてだ。
どういう方式なのか把握していない私は周りよりハンデを背負っていると言って間違いはないだろう。
学生の本分は勉強である。
当たり前の事を私は噛み締めている。
先輩達も定期考査が近いらしい。
きっと先輩達も今頃机に向かって勉強している事だろう。
とりあえず、テストが終わるまではバンド活動は一時停止だ。
だが、良かったのかも知れない。
やる事に追われていれば嫌な事を思い出さずに済む。
そうすれば、二次選考の悔しさに1日中苦しめられる事はなくなる。
シャーペンを握る手には絆創膏。
ベースの弾きすぎで手の皮がが剥けてしまっていた。
弾き慣れていないせいか、手の皮が薄いのか。
はたまた余分な力を入れ過ぎているのか。
お陰でシャーペンを握るのが億劫になっている。
ノートを取りながら先生の話を聞く。
先生の声がちゃんと聞こえるほど教科書は静かだ。
“あのステージはこれより静かだったな”
暗く静かなステージを思い出す。
小さな箱の中にいるのは審査員と私達だけ。
その中で響く私達の演奏。
“いけない!”
私は我に帰ると首を横に振り頭に浮かんだ映像を掻き消す。
ちょっと気が抜けると昨日の事を思い出してしまう。
授業に集中しなくては。
自分を律し私は再びノートに向かう。
今週末からはテストなのだから。




