ありがちを叫びたい 41
誤解されたくないのはアイドルだった過去が恥ずかしいう訳ではないという事だ。
アイドルらしい振る舞いをする事を恥ずかしいと思った事は一度もない。
むしろ16区ナゴヤに入られた事は幸せに思っている。
だけど、こんなに慌てているのはアイドルの部分を一度も見せたことのない先輩達にその姿を見られてしまったからだ。
しかもこの後、電車に乗って4人で帰らなくてはならない。
もはや選考の時よりも気が重い。
「俺たちには見せたことないくらいの笑顔だったよな」
私の気持ちに追い打ちをかけるように今岡先輩が言う。
「そういやテンションも声の高さも俺たちといる時よりワントーン高かったし」
豊田先輩がさらに畳み掛けてくる。
「今まで地味だと思ってたけど、そりゃアイドルで売れるよな。あれだけ神対応出来るんだから」
横井先輩だけは絶対に許さない。
1人だけわざとらしく知らないふりをしているから。
アイドルが好きでアイドルだった頃の私のことを知っている。
知っているクセにに他の先輩達と一緒に私をからかうのだから。
私は歩く速度を上げ先輩達を追い抜く。
「もう先輩達の事なんて知りません!あとは自力で帰ってください!」
先輩達の事なんて知らない。
という建前だが、これ以上揶揄われたら多分私の心の羞恥心が保たない。
「ちょっと待ってよ!柄本怒るなって!」
先輩達は私の後を追って歩き出す。
本当は色々と言い返したりしたかったけどやめた。
3対1じゃ私が不利。
もっと私がダメージを負うかもしれない。
みんな笑って帰り道を歩く。
まるで青春映画のワンシーンみたいに。
でも、気持ちは快晴ではない。
決して忘れていないあの悔しさは。
だから、選考のやるせなさが少しでも軽くなるならそれでいい。
ちょっとだけそう思った。
それは苦し紛れに見出した心の救いかもしれない。
だけど、それは考えない様にする事にした。
痩せ我慢なのかもしれないが。
ただこれからは、先輩達に絶対にアイドルの部分の私は見せない。
また一つ心に固く誓った。




