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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 40

そんな出口を通り外に出る。

とても日差しが眩しい。

さっきまで室内にいたせいか思わず目を瞑る。

瞳孔が一気に絞られていく。


光を手で遮りながらゆっくりと目をあける。

周りの景色は行きと変わらない。

少し日差しが強いだけ。

私は振り返り改めて会場を見る。

ライブハウスの大きさは変わらない筈なのに、なんだか大きく見える。

急に日差しを浴びたせいだろうか。

少し躊躇いながら通った扉は今も開いたまま。


姿勢を正し頭を下げる。

後悔や、悔しさを教えてくれた場所に敬意を込めて。

そしてちゃんと心の中に留めておく。

凄い勉強をさせて貰った場所も、今の私の気持ちも。

これは皮肉ではないと自分に言い聞かせて。


頭をあげると回れ右をし先輩の元へ駆け足で戻る。

先輩達に置いていかれる訳にはいかない。

先輩達は私がいないと帰れないのだから。


身体が揺れるたび、ベースケースが背中に当たり少しヒリヒリする。

気が抜けたせいだろうか。

隠れていた叩かれた場所の痛みが戻ってくる。


“そう言えば、コンサート終わりっていつも背中ヒリヒリしてたな”

なんとも懐かしい痛みだ。

痛い事は嫌いだが、こういう痛みは悪くない。

背中をヒリヒリさせながら、先輩達に追いつく。

すると見計らったように今岡先輩が振り向き私に言う。


「柄本って本当にアイドルやってたんだなって今日実感したわ」

不意に言われた一言で私は立ち止まる。

自分でも顔が熱くなっていくのが分かる。

先輩達の顔をまともに見る事が出来ない。

心の中に留めている事も一気に飛んでいく。

そして背中の痛みも。


アイドルスイッチの入った私を先輩に見られてしまった。

その事実が私の体温を上げていく。

これは、すっぴんを見られるよりも恥ずかしい。

穴があったら入りたいとはまさにこの事だ。


感覚としては、テレビ番組の企画で楽屋隠し撮りされた時の恥ずかしさに似ている。

見せたくない自分を見られてしまった感覚。

こういう事を考える私はやはり女優には向いていない。

改めて実感する瞬間だった。

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