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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 38

アイドルスイッチというスイッチがという言葉がある。

そのスイッチは自分のオンオフを切り替えるスイッチだ。

あくまで、気持ちの切り替えの問題で決して裏表があるわけではない。

このスイッチはアイドル全員が持っているわけではなく、プロ意識が高い子に多い。

アイドルという職業を突き詰めていくとこのスイッチが自然と身につく。

偉そうに言っているが、これはある先輩からの受け売りだ。


カメラを前にした時、マイクを持った瞬間、ファンの人と話す時など、意識している訳ではないがギアが一段階上がる感覚になる。

例えるなら、演技が上手な女優さんが演技に入り込む時の気持ちの切り替えと同じ様なもの。

女優さんのそれに比べたら大したものではないが、確かにスイッチは存在する。


完全にスイッチが入っている。

16区ナゴヤと名前を出された瞬間、気持ちが切り替わる感覚があった。


「はい!元16区ナゴヤの柄本萌です!今は卒業しているので、元ですけどね」

渾身のアイドルスマイルで答える。

今はバントのベース担当の柄本萌ではない。

元アイドルの柄本萌だ。


「やっぱり本物なんだ!」

控え室が騒つく。

みんなよく分かったなと思う。

今は髪を切ったし、メイクも全体的に薄めで、服装もパーカーにデニムと平凡な高校生。

アイドルだった頃と違い、かなり地味なはずだ。


「覚えていてくださってありがとうございます!」

そんな地味な私が控え室で注目されていると思うと恥ずかしい。

本来ならもっとちゃんとした状態で人前に出るべきなのだから。

まさか、気づく人が居るとは思っていなかった。

恥ずかしいがすこしだけ嬉しい。


そこからは質問責め。

控え室にいる大半がアイドルという存在に興味を示していた。

結局楽器を置く暇もなく、久しぶりにアイドルという職業を全うしていた。

その興味は良くものだけでない事はちゃんと肝に銘じながら。

気付いたら隣に居たはずの先輩達が私の楽器をも持って片付けを始めた事にも気付かぬまま。

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