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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 37

控え室に戻る私達の足取りは重い。

やりきったという達成感もない。

背負ったベースもやけに重く感じる。


「忘れられそうにないな」

暫くは多分悶え苦しむ事になるだろう。

いつも明るい豊田先輩ですら落ち込んでいる。

審査員による総評はダメ出しのパレード。

ありとあらゆる言葉の列が私達の心を轢いていった。

正直、並の精神状態ならすぐに粉々にされていただろう。


心が砕けなかったのは悔しさのお陰だろう。

悔しさという傷を既に負っていた為、審査員に何を言われても立っていられたのだ。

もちろん審査員の言葉は心に刺さるものばかりだったし、勉強にもなった。

言葉の一つ一つはちゃんと覚えている。


だけど、悔しさが一番に来ている。

私だけじゃない。

メンバー全員が同じ様に悔しさを感じていた。

前を歩く今岡先輩の背中からもその事が伝わってくる。


実力を出し切れなかった。

これに尽きるだろう。

後半尻上がり的に調子を上げていた。

もし、最初からこの演奏が出来ていたらという思い。

そして、3分の1を切った時の何も出来ない感覚。

豊田先輩の言う通り、忘れられそうにない。


今日は審査のみ。

結果は後日通知が来るらしい。

後日がいつなのかは知らされなかった。

もしかしたら、明日かもしれないし、来週かもしれない。

後日とは随分言う側の都合の良い言葉だと思う。


具体的な日にちが分からないというのは、待つ側にとって苦痛でしかない。

その間、どれだけの時間自問自答を繰り返す事になるのだろう。

既に胃が痛い。

ため息を飲み込み控え室の扉を開ける。


騒がしかったはずの控え室は私が扉を開けた瞬間静かになる。

そして、私に集まる視線。


「あの…間違っていたらすみません。16区ナゴヤの柄本萌さんですよね?」

控え室にいた一人の男子が私に問いかける。

私は忘れていた。

ここは愛知県で、自分が名古屋のアイドルグループにいたということを。


そして、改めて思い出した。

通知が来るまでの苦しさを。

やっぱり後日なんていう曖昧な言葉は嫌いだ。

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