ありがちを叫びたい 32
私もコップにマヌカハニーを混ぜたドリンクを注ぐとゆっくり飲み始める。
このドリンクをかれこれ3年位飲んでいる為かこの味にも慣れたものだ。
私がゆっくり、でも確実にコップの中身を飲んでいく様を見た今岡先輩は自分のコップを見つめる。
そして、一気に液体を飲み干した。
「不味い!もう一杯くれ!」
眉間にシワを寄せ私にコップを差し出す。
そんなに一気に飲むものではないのだが、嬉しくなった私は先輩のコップにまたドリンクを注ぐ。
そのドリンクをまた一気に飲み干す。
「これで喉は万全だな!」
言葉は力強いが顔は怖い。
このタイミングでゆっくり飲むものだと伝えたら一体何を言われるか分からない。
しばらくは黙っておこうと心に誓った。
「エントリーナンバー223番のバンドこちらへ」
ついに私達のバンドが呼ばれ控え室を出る。
呼ばれた瞬間、不思議と緊張はなかった。
「なあ、あのバンドの女の子どこかで見た事ないか?」
私達が居なくなった控え室は少しざわついている。
「お前もそう思ったか?髪型違うけど柄本萌に似てね?」
「そうそう!めっちゃ似てる!」
控え室にいた人間が一斉にスマホで検索を開始する。
まるで受験生が自分の受験番号を確認する様に、スマホの画面を凝視している。
「似てる」
多くの受験生が、すでにここに居ないショートカットの女の子の顔を思い出していた。
控え室がそんなことになっているとはつゆ知らず、私達はステージ裏で楽器の調整を行っていた。
ステージ裏には私達の他にもう一組バンドが出番を待っている。
“凄く堂々としてる”
横目で見るそのバンドは早めに調整を終え、各自がそれぞれのやり方で出番を待っていた。
余程自身があるのか、こういったオーディションには慣れているのか。
どちらにしろ、多分このバンドは上手いんだろうなと嫌でも分かるオーラを纏っている。
それから程なくして、私達の前にいたバンドがステージに呼ばれ演奏を開始する。
ベースを調整しながら、私はそのバンドの演奏に耳を傾けてる事にした。




