ありがちを叫びたい 27
そして二次選考会当日。
私達は会場に向かうため電車に乗っていた。
「あ〜緊張する。腹痛くなりそう」
今岡先輩はお腹をさする。
心なしかいつもより痩せている様に見える。
「俺も昨日緊張して眠れなかった。今真面目に眠たい」
全然寝れなかったのが顔に現れている豊田先輩。
目が少し充血している。
「柄本は大丈夫そうだな。ぐっすり寝たって顔してるし」
私の顔を見た今岡先輩は拗ねた様な顔をしている。
先輩の言う様に昨晩はぐっすり寝たし、朝ごはんもしっかり食べて来た。
こう言うと自慢みたいになるが、私は前日から当日の朝までは全く緊張せずいつも通り居られる。
それは16区ナゴヤにいた時から変わらず、オーディションの時も、コンサートの時も全く緊張しなかった。
「私も先輩達と一緒で緊張してますよ!そんな事言うなら横井先輩だって全然平気そうじゃないですか!」
駅で集合した時から、横井先輩は平気そうな顔をして弱音を吐いていない。
今だって何も語らず私達の会話を見守っている。
「ですよね!先輩!」
だが、横井先輩の返事はない。
不思議に思い振り向くと、そこにはつり革につかまったまま立ち寝している先輩の姿があった。
「こいつが一番強心臓なのかもな」
豊田先輩の一言に私達は笑いながら、電車での時間を過ごした。
「次は名古屋!名古屋!出口は左側です!」
車内アナウンスが聴こえる。
この駅で地下鉄に乗り換えなくてはならない。
横井先輩を起こし電車を降りる。
そして、乗り換えの為早足で改札を出る。
この駅は相変わらず人が多い。
とはいえ、3ヶ月まで毎日通っていたこの駅はもはや庭みたいなものだし、人混みにも慣れている。
私はいつもの様に人の間をすり抜け地下鉄に向かう。
ただ、ベースを持って歩くのは初めてで、少しだけ歩きにくさを感じさせる。
“あれ?”
何かを忘れている様な気がし、後ろを振り返る。
後ろにいるはずの先輩達が居ない。
先輩達を置いていってしまった。
その場で少し待っていると、人混みの中から先輩達が流されて来る。
「人多過ぎだろ!この駅!」
文句を言う豊田先輩。
先輩達は人混みに慣れてないことを忘れていた。




