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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 26

起きている間、頭から離れない。

ふと気づくとその事を考え続けている。

2次選考は近づいているのに私を侵食していく。

気晴らしに本を読んでみても、ありがちな青春漫画のゴールはどれも同じ。

こんなものに、答えが載っているわけない。


“今のままじゃ音楽を嫌いになるか”

余りにも唐突過ぎる。

店長は何でいきなり私にそんな事を言ったのか。

しかも、こんな大事な時に。


私は音楽が好きだ。

小学生の時からずっと身近にあったものだから。

アイドルだった頃も。

バンドのメンバーになった時も。

その気持ちは変わらない。

その延長線上でメジャーデビューを目指して進んでいるはずだ。


教室の外は雨。

今年の梅雨は長い。

あだにまとわりつく様な湿気は嫌い。

そして、相変わらず古典の授業は眠い。

だが、定期考査も近い。


必死にノートを取る。

思い返せば、古典のノートはミミズの這った様な線が所々についている。

さらに、所々文字が止まっている。

それを見返すと少しだけ気持ちは紛れていた。


放課後、楽器屋RACKの扉を開ける。

もちろん、一回家に帰りパーカーに着替えてからだが。


「嬢ちゃんいらっしゃい。あいつらはもう下にいるぞ」

店長はレジ横で暇そうにしている。


「今日も私が最後でしたね」

そんな自虐を言いながらスタジオに降りていく。

私にあんな事を言った店長だが、いつもと変わらず言葉を交わす。

これが、大人だなと思う。

気持ちの切り替えが早く、相手に気まずさを感じさせない。


少しだけため息をつき階段を降りていく。

一歩一歩降るごとに、先輩達の楽器の音が大きくなる。


“とりあえず、目の前の事に集中しないと”

強く息を吐きスタジオの扉を開ける。

先輩達には迷惑をかけない様にしなくてはならない。

選考はもうすぐそこまで迫っている。


不思議な事にこんな心の状態でも楽器を弾く手は止まらない。

楽器を弾いている間は無心になれるからだ。

ただ真っ直ぐ音楽に向き合える。

まだまだ未熟な私はひたすらベースをかき鳴らしたのだった。

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