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また弦を切ったあの子  作者: 角河 和次
ありがちを叫びたい
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ありがちを叫びたい 25

“先輩達喜んでくれたみたいで良かった!”

カステラを先輩達に差し入れした私は内心緊張していた。

アイドル時代のメンバーには好評だっただけに自信はあったが先輩達の口に合うか心配だった。


「にしても、なんでカステラなんだ?」

今岡先輩は口についたカステラを拭い私を見る。

緊張していたことに気付かれていないだろうか。

必死に平静を装う。


「レッスン終わりだと大体口の中パサパサじゃないですか。しかも、動いた後だからお腹は減るし。だから、しっとりとしたもの且つ、食べ応えのあるものを考えたらカステラになったんです!」

この差し入れに行き着くまでかなりの時間を要した。

おかげで、差し入れのバリエーションはかなりの数ある。

いつか先輩達に披露したいなとは思っている。


先輩達は私を見て口をパクパクさせていた。

その光景は面白ろ可笑しく、それでいてアメリカンコメディーの様な懐かしさを感じさせる。


それにしても改めて感じる食の凄さ。

食べることに集中すると色んな嫌なことも忘れ、幸せを感じられる。

目の前で、口をパクパクさせている先輩達を見ているとそう思えた。


一人で自宅に向かう帰り道。

この場合、戻るの方が正解だろうか。

私は相変わらずパーカー。

梅雨のせいで最近は自転車を使えない。

徒歩だと時間がかかる。


“スニーカーもだいぶ汚れちゃったな。でも、天気悪いから洗っても乾かないし、ちょっとムカつく”

足元を見ると道は水溜りだらけ。

傘を差していると空も見れないし、ついつい下を向いてしまう。

やっぱり雨は好きじゃない。


1人になると嫌でも気持ちがモヤモヤする。

ミュージックプレーヤーを操作していても今の気分に合う曲が出てこない。

胸に刺さっている言葉のせいだ。


「嬢ちゃんは今のままじゃいつか音楽を嫌いになる。今のままじゃな。」

私が子供なのだろうか。

言葉を飲み込めない。

カステラの様に甘くも軽くもない。

余りにも重過ぎる言葉。


さっきの先輩達みたいに食べ物で嫌な事を忘れられると良いのだがそうもいかない。

気を紛らわそうとした結果が差し入れを作るという事に繋がったのだった。

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